その日なまえは朝からベッドに引きずり込まれた。昨晩散々に蹂躙した肌をまだ足りないとでも言うように、けれども昨晩よりずっと丹念に暴いた虎徹。
唇からこぼれる文句が嬌声に変わる頃には、二人ともすっかり行為に没頭していた。
それが、今朝の出来事。

二人は今、映画から出てきたところである。虎徹にしては珍しく、有給休暇を取ってまでなまえのために時間を費やしていた。
なまえが行ってみたいと話していたカフェに始まり、なまえの久々の買い物に付き合い両手いっぱいのショップバッグやボックスを車に詰め込み、観たいと呟いていた映画を連れ立って鑑賞したのだ。


「楽しかったかー?」

「楽しかった!ありがとう!」


本音を言えば、虎徹は普段PDAをはめている右手首にその感覚がないことに違和感を感じていたし、街中のモニターを見上げては事件がないか心配に思っていた。よくできた相棒がいるとは言え、完全に自らの責務を忘れることはできない。

それでも虎徹は、なまえと繋いだ手のひらや隣に触れる柔らかな温度、自分を見上げて笑う表情や仕草に年甲斐もなくはしゃいでみせる。
今日のこのささやかなイベントは、普段全くわがままを言ったりしないなまえへの感謝や労り、愛おしさをこめたものなのだ。


「なまえがたのしーならよかった」

「なあに!虎徹は楽しくないの?」

「楽しいに決まってんだろ」


正直に言うなれば、虎徹にとっては話題のカフェも話題の映画もショッピングもどうでもよかった。
虎徹が嬉しいのは、デートに浮かれていつもより気合いの入ったなまえの化粧や髪型、普段はめったに着ないミニスカート、終始笑顔で自分の隣にぴたりとくっつくなまえがいることだ。

だから、突然、虎徹がそんな気分になったのも、なまえからして見れば想像に難いが虎徹にとっては至極当然のことだったのかもしれない。


「…なあ、ちょっとトイレ行かねえか」

「ん?いいよ、待ってるから行ってきなよ」

「お前も来んだよ」


なまえの手を引いて入ったのはショッピングモールの地下街、更にその奥まった場所のトイレだった。図らずも地下街には客足が少なく、奥まった場所ともなれば客足は更に遠い。
それを見越してここへ来た虎徹は、余裕の表情を崩さずにズカズカと男性用トイレへ足を進める。勿論、なまえの手を離すことはない。


「虎徹っ、ねえ、ちょっ…ん」


二人がトイレに体を滑り込ませた瞬間、屈んだ虎徹は一思いになまえの唇を奪う。下からすくい上げるようなキスはだんだんと荒っぽくなって、虎徹はなまえのくぐもった拒絶を素知らぬふりして個室へと引きずり込む。

カチャリと簡素な鍵をしめ、唇を離せばなまえは涙目で息を整えるのに夢中だ。
キッと虎徹を上目遣いに、抗議の眼差しを向けるなまえだがその真意は汲み取られることなく、逆に彼を煽るだけの結果となる。

虎徹は扉に背を向けなまえを追い詰めたまま、細身のタイトなパンツを膝まで下げて下着も同じく膝まで下げた。片足から両方を抜いたところではあと落としたため息は熱い。
一部始終を見つめていたなまえは、声を上げたり暴れたりの拒絶ができない。それもそのはず。ここはショッピングモールのトイレであり、しかも男性用なのだ。そんな所で散々に声を出したり音をあげたりすればどうなるか、なまえはそんな危惧から何もできずにいた。


「…ん、なまえ…俺に背中向けて、ここに座って」


半勃ちのペニスがあまりにも生々しい。
虎徹はその手で扉を押さえながら個室の洋式トイレに足を大きく開いて深く腰掛け、半分程度の前部分を軽く叩く。
なまえは当然首を横に振った。


「なあ、なまえ…ずっと、なかなか二人きりの長い時間を取れなくて辛かったのは、俺だけか?」


琥珀の瞳が悲しげに歪む。なまえが少しの時間視線を泳がせながら逡巡しているのを、それでも虎徹は待った。外気に晒されたペニスは赤黒く、萎えるどころか向こう側に伸びるなまえの肢体を前にどんどんと硬度を増していく。


「…いい子だ」


ぎしりと音が鳴る。元来大人二人が腰掛けることは想定されていない。
彼女は意を決したように唇を噛んで俯いたまま、虎徹に背を向けて腰掛けた。
尻の割れ目に丁度沿うような形のペニスの感触が、なまえの羞恥心を煽り虎徹の興奮を煽る。


「…なまえ」

「…っ」


なまえのうなじを掻き上げ、虎徹は湿った唇を彼女の耳裏で開く。ダイレクトに脳を揺さぶった唾液の音と低い声。
虎徹は性急にもなまえの下半身へと手を伸ばし、その下着の中へと手のひらを差し込んだ。


「…ん、あ…」

「…なんだ、濡れてんじゃねーか」


虎徹の言うとおり、半勃ちのペニスを視界に捉えてかなまえの秘所はしっとりと濡れはじめている。けれどまだ足りない。虎徹は耳裏で舌なめずりして、扉を押さえていた手のひらを彼女の尻を撫でながら、下から秘所へと這わせた。


「ひゃっう」

「…イイ声」


軽い口笛が耳裏で響く。なまえの背筋はその息遣いと、上下から与えられる刺激に背筋を反らした。
虎徹は右手で彼女の太ももの上から包皮に隠れた陰核を、左手で尻の下から濡れた割れ目を愛撫する。
なまえはと言えば自らの両手で口をふさぎ、悲鳴なのか嬌声なのかわからない声を押さえ込むしかできずにいた。


「いっぱい濡れてきたねえ」


あまりにも卑猥なセリフがなまえの秘所を更に溶かしていく。ぐずぐずに溶けたそこを、虎徹は指先で叩くように音を立てた。粘着質な水音が小さく小刻みに上がる。彼女の体は固くなるばかりで、足がかたかたとちいさく悲鳴を上げる。


「ひぁっん、んん…っ」

「おら、我慢しねえと…人がきたら困んだろ?ん?」


まるきり悪人のセリフだ。普段と同じく自宅か虎徹の家のベッドで発せられたものならば、なまえも気兼ねなく悪態をつけるだろう。それができない状況に、二人ともがある種の興奮状態にある。


「後ろっからだと、指奥まで入んねえな…」

「…、っ!う、ぅあ」


下から割れ目に指を第二関節まで入れて中の柔肉をほぐしていけば、重力に従って落ちる愛液は彼の手のひらに溜まり、溢れ、便器へと落ちていく。虎徹はペニスを更に彼女の尻へと押し付け、そして小刻みに上下に擦り始めた。


「っこ、て…つ…」

「…はあ、んー?なまえはもう、我慢できねえ、か?」


息も絶え絶えに腰を動かす虎徹は、右手人差し指と中指の腹で優しく撫でていた陰核をきゅっと摘む。そこでとうとう彼女の膣はいつの間に挿入されたのか彼の指先3本を一際強く締め付け、ぴくりぴくりと痙攣しはじめた。


「…っ!!あ、ぁ、っ!」

「よーく我慢できました」


虎徹はまだ絶頂に達していない。痙攣しながら呆然とするなまえの背中を胸板に預かりながら、虎徹は立ち上がり大きく足をあげて便器から離れた。
なまえの背中を便器のフタに寄りかからせ、虎徹は完全に立ち上がったペニスを彼女の眼前に晒すように目の前へと移動する。


「なまえ、ようっく見てろよ…今からお前のかわいー顔、汚すからよ」


半分とろけたなまえの思考。その視界には、赤黒く張り詰めた虎徹のペニス。
虎徹は左手をペニスの上でなまえに向かって開いて見せる。
指先をつうと伝って、ペニスの先に垂れるのはなまえの秘所から溢れた体液だ。
二人の体液が混ざり合って、彼のペニスを伝う。

個室内に立ち込める性の匂い。なまえの目尻からは、涙が零れる。虎徹はそれすらも絶頂へのスパイスにして、ペニスを握って上下に激しく扱き始めた。


「は、あ…っ」


なまえは初めて、虎徹の自慰を目の当たりにした。
苦しそうな息遣いは熱く、しかめられた眉は恐ろしくセクシーで、時折伏せられる琥珀の瞳が苦悶と快楽とをまぜこぜにして、彼女の体を震えさせる。


「…っう、あ…っ」


にちゃにちゃとトイレに似つかわしくない水音が止み、虎徹が低いながら声を上げると同時に震えたペニス。なまえが目を閉じると同時に勢いよく放たれた熱い白濁がとろりと彼女の顔を汚す。

びゅくびゅくと収まらないそれに、虎徹は指先でゆるくペニスを扱きながら最後の一滴までもを絞り出した。
充満する青臭さに、床に落ちる白濁。なまえの顔を汚して頬から顎へと伝う生温い白濁を、彼女は衣服に落とすまいと手のひらを受け皿にして小さく息を吐いた。


「………は、なまえ、」


カランカラン、トイレットペーパーを引き出す音がやけに響く。虎徹はすっかり落ち着いたペニスをぶら下げて、トイレットペーパーでなまえの顔を丁寧に拭き上げる。全てを拭き取ったところで瞼を開けた彼女に苦笑いを一つ、新しく取り出したトイレットペーパーで自らのペニスを拭き、下着とパンツとを履き直した。


「…虎徹の、ばか」

「よく言うよ。…興奮しただろ?」


恥ずかしさに顔を伏せたなまえに、ニヤリと笑った虎徹。
彼女は鼻孔を刺激する青臭い雄の匂いに眉をしかめたが、すぐに頭上から落ちるキスの気配に、そっとまぶたを落として虎徹の首に腕を回した。

帰宅後、今度は更に意識が飛ぶまでいじめ抜かれることになるのも知らずに。



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