「…行くよ」

背後から聞こえた不機嫌丸出しの声。あたしは聞こえないふりしてスーパーの中を見つめる。スーパーの中は活気づいている。小さな子供が親と一緒に物色しているのはかわいらしいキャンディやチョコレート。しかし今日選ぶのは遅過ぎやしないか…?大きな水色の垂れ幕にはでかでかとホワイトデイと書かれている。そういえばバレンタインといえばいつもピンクだなぁ、ホワイトデイは水色のイメージ。誰が決めたんだろう?

「寄ってもいい?」

「なんで」

「骸さんにお返し買うよ」

「…貰ったの?」

「うん」

他のスーパーで買い物してきた荷物を全部千種に預けてフラフラと中に入る。見事に子供ばっかりだ。…それもそうか。もっと年齢が上の人達はアクセサリーとかディナーとかになるのかな。

適当に選んだチョコレートを持ってレジに向かう。貰ったチョコレートはおいしいおいしいゴディバさまだったけど、レジを通ったこのチョコレートはたった198円。骸さんごめんね。気持ち込めとくから許して。

スーパーを出ると荷物を両手にぶら下げた千種がますます不機嫌そうにあたしを睨んでいた。

「お待たせー」

「…骸さんに何貰ったの」

「ゴディバさま」

「俺、聞いてないよ」

…んん?この空気はもしやヤキモチ?確かにあたしたちは付き合って3か月目のカップルなわけだけど、だって

「…千種、めんどいって言ってたし」

「……」

何が欲しい?って聞いても「別にいい」じゃあ何かくれる?って聞いたら「めんどい」。まぁ慣れてるから今更傷ついたりしませんよ!とか溜め息吐いたあたしに骸さんの優しい言葉。「僕が差し上げますよ」

「千種?かえろ」

「…何か欲しいものあるの」

「…ん?」

「……」

「あ、あー欲しいものね、別にないけど…敢えて言うならグラタンが食べたい!…なんて」

途端あたしの手は千種に引っ張られて再びスーパーの中へと。

「な、何!」

「…グラタン、食べたいんでしょ…めんどいけど」



スーパーでイチコロ



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