ピアノの旋律が、耳の奥で途切れ途切れに助けを求める。
何度も聞いた、あなたの指先のメロディ。


"雪が降ったら、何かしようよ"

"…別にいいけどよ、この年になって雪だるまとか作る気はなれねーからな"


そう、苦笑いを浮かべながら優しく微笑む。

暇つぶしくらいの気持ちでたまに弾いていたピアノの前のあなた。

白と黒のキィが、あなたの指先の体温を奪う。

きらきらと光る日差しに、照らされた指先が奏でる旋律。

"…じゃあ、ピアノを弾いて"


我侭を重ねる私の頬に、少しだけ照れながら寄せられる唇。


"仕方ねーな"


ピアノの旋律が、途切れ途切れに木霊する。

あなたの指先のメロディ。

低く、高く。

部屋に響く、指先のメロディ。

自分で弾いても、ねぇ。

あなたのような音は奏でられないんだ。

あなたは、何を思いながら弾いていたんだろう。私を目の前にして、何を感じながら、どんな想いで。

あなたの指先のメロディは、決して私には奏でられない。

このピアノは、いつだってあなたのためのものだったのに。

また、弾いて。私のために、旋律を奏でて。

もういちど。

もういちど。



部屋に残るあなたの残り香が柔らかい白檀の香りのお線香にかき消されて、また涙が頬を伝う。



もういちど。

もういちど。


私の耳に響かせて。

あなたの、指先のメロディ。


写真の中のあなただけが変わらずに、今ここには悲しそうな顔をしたツナと山本がいるのよ。


「…はやと」


呟いた声に、2人が写真に頭を下げた。



指先のメロディ



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