ひやりとした感覚。投げ出した腕が辿り着いたのは温度のない場所だった。ぼんやりと自分の指先を見つめる。シーツからはみ出た指先に、朝の空気は痛いくらいに突き刺さる。

カーテンの隙間で揺れる朝日に胸が痛む。


「…」


背後の気配に振り向けば、寝ぼけているのかむき出しのあたしの肩に触れそうな唇に目を奪われた。

お腹に回った逞しい腕に力が入る。その手のひらは大きくて、あたたかい。


「…親方様、起きてますか?」


安らかな表情をして目を閉じている親方様に声を掛ける。今日は確か、バジルくんが来るんじゃなかったっけ…?あたしもまだ覚醒しきらない頭で考える。肩口にあたる吐息は温かくて、そしてすぐにひやりと冷える。


「親方様、もう朝ですよ」


無理もないのか。…と昨晩のことを思い出す。年齢のせいにはしたくないけど、親方様はだいぶお疲れのようだ。


「…そんな頑張らなくてもいいのに」

「…お前がかわいくてな」


ため息をついた瞬間、目の前の親方様が目を開けた。


「起きてたんですか」

「起きたんだ、あまりにも手触りが良くて」


爪の短い指先が、あたしのお腹をくるくるとくすぐるように動く。


「ちょ、親方様!」


段々と意図を持って動き始めた指先を制止する。それでも指先が止まることはなく、下腹部から中心へと衝動を走らせた。


「ん、ぅ」


くちゅ、という粘着質な音の後、耳裏に聞こえたリップ音。


ぎしりとベッドが悲鳴をあげて、あたしはお尻を突き出す格好にされる。親方様はあたしに覆い被さるようにして、指先であたしを遊ぶ。


「あ、 ん んっ」


シーツに顔を押し付けてやりすごそうとするあたしの頭を、親方様が優しく撫でた。





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