あたしは2号さんで、だからってそのことについてとやかく言うつもりはありません。…ないんだけど、なぁ。それをわかってほしいと思う。でも同時に簡単に引き下がらないで、とも思うよ。


「…明日、どっか行きてぇとこあっか?」

「ないよ。2人でゆっくりしてたい」

「お前はいつもそればっかだな」


困ったように柔らかく笑うその顔が好き。目元の皺がすきなんだ。だから困らせたくなったり笑わせてみたくなったり、あたしは今日も忙しい。


「なぁ、頼むから」

「うん」

「ご機嫌くれぇとらせてくれよ」


1Kのあたしのアパート。そのベッドに胡座かいて頭を掻く家光さん。困った顔。…あ、これは本当に困った顔だ。あたしはこの顔が嫌い。


「…ごめんね。ちがうの。本当に2人でゆっくりしてたいの」

「部屋で2人でゆっくりっつったらやること一つしかねーぞ」

「あっは。殺してやろうか」


ベッドの上で手招き。家光さんの表情は柔らかい。たまにしかここには来れないんだから、来れる時にはちゃんとあたしの中にその存在を刻み込んでほしい。

家光さんの足下に移動して、その足の間でベッドに背中を預ける。腿に頭を乗せてみれば家光さんはあたしの頭上でくすりと笑った。


「…なんだよ、エラく甘えんじゃねーか」

「…ん」


両脇に差し入れられた太い腕が、「よっと」との掛け声と共にベッドの上にあたしの体を投げた。


「…悪ぃ、淋しかったろ」

「…どうかな…でも、来てくれるから大丈夫」


ベッドに投げ出されたあたしの体を、本当に愛しそうに撫でて抱き締めてくれるその腕がだいすきだ。あたしの胸を触ってるときのなんか子供っぽいニヤけ顔もだいすき。


「…何度でも来る」

「うん」

「だから俺に愛させてくれよ」


首筋でちゅって音を立てる唇と、ちくちくと首筋にささる顎の髭すら愛しい。この感情を、あたしはどうすればいい?


「…しょうがないから、あたしが愛してあげるよ」


ほら、そうやって嬉しそうに目を細めるんだ。






信:こころは見えないけど、繋いだ手ぐらいは信じてもいいかな




「…俺は幸せだな」

「…当たり前でしょ」

「お前も、幸せにしてやりてぇよ」


引き下がらないで、とは思うけど。やっぱり変な遠慮はしないでほしいな。だってあたし、幸せなんだよ。

ありったけの気持ちをこめて抱き付いたら、家光さんがあたしの額に優しいキスをくれた。


「あんま甘えんな、涙が出そうだ」





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