「…なぁ、いつ帰ってくんの」

任務に行く為の用意をしている部屋の中、殺風景な空間に似つかわしくない金髪が風を揺らしながら、見えてるのか見えてないかわからない目をした男がそう言った。

「…1週間くらいかな」

ベッドの上に無造作に散らかした書類を横目に見ながらそう答える。彼、ベルは一瞬口を閉じてから、壁に寄り掛かったまま「ふーん」と言って、私を見つめる。

「…何か用があるの?」

書類をチラチラ確認しながら必要なものを揃える。殺す為に必要なもの、証拠をとる為に必要なもの。

「………」

集中してればいいのに、それでも沈黙が痛い。ついでにそんな見つめないでくれませんか。

「…なに、」

「…なんでレヴィなの」

頭の上にちょこんとのったティアラが光る。輝く。

この王子さまは何を言ってるの。なんでレヴィなの?なんでって、そりゃボスの命令だもん。私だってレヴィなら比較的平和に任務を完了できるだろうな、と思ってるわけで。

「ボスの命令だし」

「そうじゃなくて、」

用意を整えた私がベルに向き直れば、ベルは明らかに不機嫌そうな口調。

「…なんで、俺じゃねーの」

それきりベルは口を結んでしまった。

なんで?なんでベルじゃないか、ってそりゃ、…後が面倒だからじゃない?

…とは言わないでおいた。

「…ボスに直接言えば?」

「………」

「………」

「…ししっできると思う?」

「…ベルなら」

「…しょーがねーから行って来てやるよ」

ベルがあたしの荷物を軽々と肩に掛ける。あれ?あたし今無理難題をふっかけたつもりなんだけどな。おかしいな。

「………」

部屋に一人残された私。時間になったというのに、迎えにきたのは律義なレヴィではなく、暴君な王子様だった。






コールドプレイ
一人で行って欲しい。




「…レヴィは?」

「これから一週間王子と二人じゃん。嬉しいだろ。喜べよ」

やけに楽しそうなベルを隣りに歩きながら見つからないようにため息を吐く。
冬の空気が冷たい。




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