「親方様、」

静かな部屋の中、凜とした声が高くもなく低くもなく俺の元に届いた。

顔をあげればそこには黒いスーツに身を包む女性。

「…スカート短くねぇか?」

震えそうな声。
呆れたような声音に聞こえただろうか。

短いスカートの横にはキワドいラインのスリット。
彼女が動く度に視界に写る、黒いガーターベルト。

ガーターストッキングのレースとそこにはめ込まれた黒い銃が、不釣り合いなようでいて、それでいてなまめかしい、なんて。

「…そうですか?」

しかし彼女はそんなことには気付かないかのように、頬にかかる髪を指先でかきあげてこちらへと足を進める。

黒い網タイツに包まれた、白く細い足。
歩く度に高い音を響かせるのは、他の部下では履きこなせないだろうと思えるほど高くて細いヒールの靴。

極力優しく笑って彼女が抱える書類を受け取る。


例えば今ここで彼女をデスクに押し付けてそのストッキングを破り捨てることができたら、黒いスーツを衝動のまま床に投げることができたなら。

そうしたら俺達のこの行き場のない欲求は、終着点を見つけるのだろうか。



黒に包まれた彼女の唇だけが、いつもと変わらず赤く濡れている。



限りある心拍



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