浴室内独特のエコー。
湯気で白んでいるその中で、檜の浴槽に身を沈めた。
天井に張り付いた水滴が時たま湯船をぽちゃんと揺らす。
肩まですっかり湯船の中に収めて軽く息を吐いた。
熱いくらいのお湯の温度が丁度良い。

のんびり半身浴でもしようかな。

すっかり気を良くしたあたしは、隠していたお気に入りの入浴剤を湯船に落とす。

「私も入るアル!」

しかし今日も1人ゆっくり、なんてできるはずはなく、小さな女の子が浴室に飛び込んで来た。

「何いれてるアルか?」

物珍しそうに色の変わって行く浴槽の中を見つめながら、浴槽の縁に足をかける。

「流してからにしなさい」

どうせ何を言っても出て行かないんだから、呆れながらあたしは浴槽の中に神楽ちゃんのスペースを作る。

神楽ちゃんは「はーい」と返事をして、桶に浴槽の中のお湯を掬って肩にかけた。

「…あっちィ!」

勢い良く桶から放たれたお湯の飛沫が顔にぶつかる。

神楽ちゃんはその桶にまたお湯を掬い、今度は蛇口から水を出してぬるま湯を作って肩にかける。

そしてシャワーを浴槽に入れ、水の栓を捻ろうと手を伸ばすのを見て、あたしは浴槽の中でゆっくりと立ち上がった。

「温くするならあたしはもう出るけど、のぼせないように気をつけるのよ」

しかし神楽ちゃんは栓から手を放し、代わりにあたしの手首を掴んだ。

「…一緒に入りたいアル」

ポツリ、呟かれた声に「随分と甘えん坊ね」と答えたら、いつもなら子供扱いするなと騒ぐ威勢もどこへやら、熱いと叫んだ湯船に飛び込むようにして入る。

「…今日は、一緒に寝ようか」

小さく息を吐いて、神楽ちゃんの隣りに再び水面を揺らしたあたしに、神楽ちゃんが少しだけ恥ずかしそうに笑顔を浮かべた。



一番近くのライナスで





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