もっと近いところでぎゅってひとつに溶け合って融けあって、もう二度と離れられないようになれたらいい。


腕の中で小さく嬌声をあげた彼女を、息を切らしながらそれでも幸福な気持ちで抱きしめる。
汗ばんだからだがぴっとりと密着して、そんなことも幸せに思う俺はかなりの重症だと思う。

肩にかかる息は浅く、俺の背中に回っていたはずの細い腕は力なく枕の横に投げ出されている。
ほとんど無意識にその汗ばんだ手のひらを俺の手のひらで包んだら、少し紅潮した表情の彼女がうっすらと目をあけてしあわせそうに笑った。





あの頃、俺はバカみたいに彼女がすきで、彼女を自分だけのものにしたかった。

「なぁ、」「うん?」「キス、してもい?」「…うん」「な、キスだけじゃ足りねー、かも」

悪いことだとかいいことだとか、そんなん何も考えられなかった。
ただ愛しくていとしくて、あいしてるなんて言葉の意味を初めて知るようなこい。

「ん、いた、い」「ご、め」「ちょっと、まってて ね」「…、ハ わかった」

じくじくと下腹部からしびれる様な甘い鼓動が聞こえる。俺の下で指先に力をこめる彼女は本当に辛そうな表情で、彼女の痛みも全部俺が引き受けるのに、だから、頼むから彼女に痛い思いさせないでくれよ、とか本気で思った。(実際に痛い思いをさせてる張本人は俺なんだけど)(とにかくそれくらい、彼女は痛がっていた)

「血、出てっかも、」「ん、でも」「ん?」「なんか、しあわせ かも」

白いシーツを汚す赤と、彼女の頬を濡らすなみだ。浅い呼吸を繰り返す俺たちはそれでもやっぱり動けなくて、怖くて、俺は彼女と繋がる部分を極力揺らさないように、彼女の首筋だとか耳だとか頬だとか額だとかにキスをした。

「ふふ、ディーノ、いっしょうけんめ 」「、だって」「口には、してくれない の?」

汗ばんだ額にキスをして、唇を舐めたら少しだけしょっぱい。俺はバカだから、彼女の匂いがいつも甘いから、もしかしたら舐めても全部甘いかも、とか思ってた。でもやっぱり汗はしょっぱくて、同時におんなじだ、って当たり前のことに嬉しくなった。
「ん、あ」「ダ、メ かも」「も、だいじょー ぶ」「へ?」「うごいて、いい、よ」

初めてのこと、こわいこと、しあわせなこと、きもちいいこと、いたいこと。

全部ぜんぶ彼女のことをぎゅっとして、彼女がぎゅっと目を瞑って声にならない悲鳴をあげて、俺も我慢できなかった声だけ漏らして。
そんで目の前が真っ白になって、パンってなんかが破裂して、俺はきもちよくてきもちよくて何がなんだかわかんなかったけど、彼女は初めてだから気持ちいいより痛い方が強くて。

「ごめん な」「な、んで?」「俺ばっか きもちよくて」「しあわせだよ?」「ほんと?」「ん、だって、あたしの中に ディーノがいたの」





ぎゅ、と込められた手のひらの力に目の前がチカチカした。
目の前では少しだけ汗の引いた額をあらわにした彼女が、不思議そうな顔をしている。


「ディーノ?何かんがえてる、の?」

「んー、今お前、気持ちいい?」

「…念のため聞いとく。なにが?」

「何って、エッチ」

「……なんで」

「あれ、きもちよく、ない?」

「………きもちー、けど」


消え入りそうなほど小さい声。汗ばんだからだは変わらずぴっとりくっついている。


「初めてのときのこと、思い出してた」


口付けた額からは、あの時と同じような味がした。








遡及したところから巻き戻って早送り




俺はあの頃からずっと、こんな幸福な気持ちを抱いて、閉じ込めている。


「もっと近いところでぎゅってひとつに溶け合って融けあって、もう二度と離れられないようになれたらいいのに」

「そしたらぎゅってできないし、キスもできないし、エッチもできないよ」


恥ずかしそうに俺の下でもぞもぞ動く彼女。まだ入ったまんまの俺のが、その、ちょっと擦れて反応したりして。
それをとがめる様に彼女がつないだままの俺の手の甲を抓った。


「そーだな、…あーでも、なまえ、好きすぎる。どうしよう愛してる」


世界で一番の幸福を、あの頃から俺にくれるのは、これから先も彼女だけ。




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