広くもなく狭くもない部屋。それは同じ屋敷の中にあるというのに独特の雰囲気を纏っている。それはただ単にインテリアの関係もあるのだろうけど、それ以外にもある、ような気がする。

オフホワイトのシーツにくるまってすやすやと安らかな寝息をたてるなまえを見下ろす。むき出しの肩が寒そうで、起こさないように慎重にシーツを唇まで掛けてみた。なまえは一度だけ苦しそうに身動ぎして、シーツから唇を出した。半開きの口から息が零れる。そういやこいつ寝る時いつも口半開きだな…。

それきりなまえは身動ぎひとつしなかった。オフホワイトのシーツに包まれて、ブラウンの木目がきれいなベッドで静かに眠る。ずっとその寝顔を見ていたかったけど、そもそも俺がなまえより早く起きるってのはそれなりの時間なわけで、要はさっさと終わらせないといけないことがあるわけで。
枕元のデジタル時計はAM6:00と俺に告げる。起きたのは5時だったはず。起きてからなるべく音を立てないようにベッドから這い出て、なるべく音を立てないように顔を洗って着替えて、…その後俺ずっとなまえの寝顔見てた?

うわ、俺恥ずかしいかも。


そろそろ行かねーと、なんて思って枕元のチェストの上に放ったままだった腕時計をはめて、携帯を持つ。なまえは変わらず穏やかな寝息をたてている。

思えば昨夜だって久々だった。いや、やらしい意味じゃなくて。やらしいこともしたっちゃしたけど。ちゃんと目を見て話すことだったり手を握ることだったり他愛もない話をすることだったりキスをすることだったり、だ。

最近は忙しくてなかなか構えなくて、でもなまえはそれに対して不満も言わなくて、どうやら先に限界がきたのは俺だったらしい。

仕事を早めに切り上げて、同じ屋敷の端から端まで全力で走ってこの部屋に飛び込んだ。なまえは双眸を見開いて「ディーノ?どうしたの?」とマグカップをチェストに置いた。俺は息がきれてて言いたいことも言葉にならなくて、とりあえずベッドに座ってるなまえに駆け寄ってありったけの力を込めて抱き締めたっけ。

眠るなまえの前髪を掬って、顕になった額に唇を寄せる。チェストのデジタル時計はAM6:30と俺に告げる。ヤバい。早く起きた意味ないじゃねーか俺!

とりあえず自分の部屋戻って違う服着ないと出かけられない。なまえは寝ている。


あーあ、なまえをポケットにいれられればいいのに!

出かけるにはもったいない寝顔を視界の端に見ながら、静かに部屋の扉をあける。そこにはもう、朝の光が差し込んでいた。






未練の枕



起こしたくないような、起きて欲しいような。そんなことを思いながら扉を閉める。
…やっぱ「いってらっしゃい」くらい言ってもらってもバチはあたんねーかな、なんて扉の前で考えてたらロマーリオに「遅い」と叱られた。



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title by Yukune Kariya special thanx!




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