華奢で小さくて色白でそして守ってあげたくなるくらい可愛らしい、それでいてベッドでは大胆、なんて。


「ディーノ、浮気してるよね」


にっこり。あくまでもにっこり笑うあたし。目の前で今起きたばっかのディーノは何が起こってるのか、必死に整理しようとしてるらしい。失敗したな。これでも本当は「おはよう」ってキスしてからお話するつもりだったんだけどな。


「…え、…え?」

「まだ目は覚めない?」


寝ぼけているのか動揺しているのか。よくわかんない反応を浮かべつつベッドの上で頭をぐしゃぐしゃとかきまわすディーノを見ながら溜め息をつく。


「…勘違いじゃねーか」


どうやら後者だったらしい。そしてしらばっくれちゃえ、という結論に落ち着いたらしい。ふざけんな。


「そうね。デート現場を見たんだったらまだ許せるんだけど」


残念ながら勘違いでは済まされない。だって見たんじゃないもん。いやちらっと見たけど。


「…一昨日の夕方、どこにいたの?」


仕事があるから屋敷を出たあたし。2時間後忘れ物を取りにとんぼ帰り。気分はブルー。部屋の中を探って愛用の銃を見つける。どおりで身体の左右のバランスがおかしいと思ったのよ。ベルトに差していざ。…と思ったら部屋の外から足音。開いたらしい扉から入ってきたのはディーノとかわいらしい女性。…おいおい。恋人が不在の間に浮気かい?もちろんそのあと彼らはベッドに沈んでうっふんあっはんな感じで。

あたしはそれをレコーダーで録音することを忘れず、カーテンに隠れて窓から出たわけだ。


「…と、いうわけなの」


にっこり。目の前でディーノは顔面蒼白。


「それでこれが、さっき窓枠から回収した小型レコーダー」


目の前にちらつかせれば益々蒼白。口をぱくぱくさせたまま。言葉を発することを忘れてるようだ。人って本当に恐怖を感じたときには声が出せなくなるって本当なのね。


「あれから2日経ちました。昨日は生憎仕事だったけど、今日は仕事ないから」

「…なまえ、」

「ゆっくりじっくりお話しましょうね」

「、ほんとに、わる、」


黒い銃をディーノの額につきつける。今聞きたいのは謝罪でも言い訳でもなく真実なんだから。無駄なことはしゃべらないで。


「レコーダー再生していい?」

「、やめ、」

「なんで嫌なの?聞いたら勃っちゃう?」

「…!?」


不機嫌?いいえご機嫌よ。銃口を突き付けられたままの態勢で固まっているディーノ。

にっこり。


レコーダーを、扉によりかかったままことの成り行きを見守っていたロマーリオに投げ付ける。案の定ロマーリオはそれを易々とキャッチ。目の前ではディーノが今度はポカンとしている。


「ロマーリオ、データをコピーして街中に配りなさい」

「ちょ!なまえ!」

「いつぞやはヒマ人に思われたいなんて偉そうなこと言ってたけど、本当にヒマなのね」


笑顔で銃のセーフティを解除すれば、さすがのディーノもヤバいと感じたらしく表情がひきつった。


「悪かった!ちょっと出来心で!最近なまえとはご無沙汰だったし、」

「アンタが仕事やんないからあたしたちに皺寄せがくんのよ」

「ロマーリオ!たすけ…」

「…なまえ嬢、やっちまいな」

「ロマーリオぉぉぉぉぁ」











華奢で小さくて色白でそして守ってあげたくなるくらい可愛らしい、それでいてベッドでは大胆、なんて。

あたしはなれそうもないわ。




ご利用は計画的に。





何発かの発砲音が屋敷内に響き、それから一週間、誰もディーノの姿を見なかったという。




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