ひらりと舞うかのように形を変える真っ赤な花びら。
肉厚の花弁は今にも零れて舞い落ちそうだ。
思わず指先を伸ばしてみたものの、その花びらを手に入れても手持ち無沙汰になるだけかもしれない。


「ディーノ、どうしたの」


目の前で笑ったまま、今年の春摘みのダージリンをこくりと飲む白い喉。
いつだったか紅茶の葉について様々なウンチクを笑顔で聞かされたが、俺にわかるのはフレーバーティーかそうでないかの違いくらいだ。

目の前の真っ白なトレイに整然と並べられた小さなケーキは、全て異なる種類のもの。
しかし目の前の彼女はケーキには一切手をつけず、ただその「お気に入り」だという紅茶をゆっくりゆっくり味わうだけ。


「ケーキ、食わねぇのか」


お土産だと彼女が持ってきた白い箱の中には、カラフルなケーキが所狭しと並んでいた。
微笑んで「きれいでしょう」と言ったのはいいが、彼女はそのケーキをトレイに並べるだけで、それ以降はノータッチだ。


「甘いもの、好きじゃないわ」


それは知ってるけど、「どうして買ってきた」とは言わないでおいた。
いつもこうだ。
見た目がきれいだからと甘い甘いケーキを買ってきては、ファミリーの奴らに差し出す。
今回も彼女の訪問に浮き足立つように、普段自分たちで甘いケーキなんかを買いにいかない様な連中が、屋敷の中でソワソワしている。


「ディーノは食べないの?」


ケーキから視線をあげる。
白くて細い指先はティーソーサーに添えられ、その白いティーカップの向こうでは、朝露に濡れたかのような花びらが、口付けを誘っているように見えた。









彼女の唇に関する考察






「じゃあ…くちびる、を」

伸ばした指先に、またその赤い花弁がふわりと香る。

「…ちょうど、食べごろよ」

ゆっくりと閉じられた彼女の瞼。



まずはその指先からいただこうか





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