携帯電話片手にうなる俺。
目の前には山積みの書類。
ロマーリオはちっとも仕事を進めない俺に呆れて、少し前に「コーヒー持ってくる」と部屋を出て行った。
シンプルなデザインの携帯電話。
色は青。
無駄にでかいデスクの隅っこで落ちそうになっている衛星電話は仕事用。
この青い携帯電話は、わざわざ日本で買ったもの。
いわゆる、おそろい、というやつで。
ストラップもおそろい、で。(うわ、なんか照れる)
携帯電話の画面を見れば、さっきからずーっと大事な大事なあの子の電話番号。
頭の中で瞬時に時差の計算。
今から電話するとして。そしたら日本は夜の11時。
明日もきっと学校だろうからせめて1時には寝かせてあげたいな。
1時間だけ。1時間だけなら電話してもいいだろ?
まだ戻ってこないロマーリオに、心の中で聞いてみる。
でも、目の前には書類の山。
無駄に広いはずのデスクは、その木目調は欠片も見れない。
書類だらけ。
片手に携帯電話握りしめて、片手にペン持って。
書類の大半はどう考えてもあと半日で終わらせないといけないもの。
終わらせて、そしたらボンゴレに持ってかなきゃいけない。
ペンと携帯を書類の上に置いて、頭を抱える。
優先順位。
勿論、今はこの書類の山をどうにかしないと。
ボスなんだ、俺はボスなんだから。
やることはちゃんとやらなきゃいけない。
あぁでも。でもさ。
俺だって、ボスである前に一人の男なんだよ。
ガチャリ。
開いた扉の向こうにロマーリオ。
片手にコーヒーが2つ乗ったトレイを抱えて苦笑い。


「いつまで悩んでんだ、ボス」


そのセリフに時計を見る。
ロマーリオが出て行ってから戻ってくるまで約1時間。


「…コーヒー淹れんの、遅かったんだな」


ロマーリオから目を背けて言う。


「そういう話じゃねーだろ」


わかってるよ。
わかってるけど、あぁ、もうこんな時間。
今からだと電話できるの30分しかない。


「…30分、出ていーか」


頼む。
電話して充電したら、きっと、絶対、ちゃんと仕事に集中するから。


「却下だな」


「なんで」


ボスが頼んでんのに!


「声聞いたら会いたくなった、って仕事ほっぽって日本行かれたんじゃたまんねーからな」


ちくしょう。
こいつ根に持ってやがる。(前科あり)
カチッ。
時計の針は無情にも進んでいく。
あ、あと24分になった。
あーぁ、こんなことなら下手に海外でも使える!なんてうたい文句の携帯電話、おそろいで買うんじゃなかった!
でも結局衛星電話も同じこと。
あーぁ、いっそのこと携帯電話なんて普及しなきゃよかったのに!
でもジェット飛ばさないと声も聞けないなんて嫌だ!

頭を抱える俺の頭上で、ロマーリオが銃のセーフティを解除する音がした。








葛藤です。








どうしよう。どうしよう。
声聞きたい!抱きしめたい!
好き過ぎて死にそうだ!。
でもその前にこのままじゃ、ロマーリオに殺されそうだ!




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