朝、携帯のアラームで目が覚める。
ピピピ。
無機質な機械音。

ぼんやりする頭で枕もとの携帯に手を伸ばす。


でも、その手が携帯を捕まえることはなく、あたしの手首はあつい手のひらに捕らえられてしまった。


「…ディ、ノ?」


あ、ダメだ。
頭が働かない。
なんであたしのベッドの中にディーノがいるんだろう。
なんでディーノはあたしの手首を掴んでるんだろう。


「…きょう、休み、だぜ」


ぼんやりとした声に、壁のカレンダーを見る。
ほんとだ。オフだ。
毎日鳴るように設定されたままの携帯が、起きろ起きろと騒ぐ。


「…けいたい、とって」


目をこすりながら、言う。
それでもディーノはあたしの手首を掴んだまま、あーとかうーとか、よくわからない単語を発する。


その様子がなんかすごく愛しい。
かと思えば、ディーノはあたしの手首を掴む手と反対の手で、あたしの腰を抱く。
あったかい。
あたしも負けじと、ディーノの胸に額を押し付ける。
とくん、とくん。
心地いいリズム。


「…おまえ、覚えてる、?」


まだまだ覚醒には程遠い頭。
オボエテル?おぼえてる?覚えてる?なにを?


「…なにか、あった?」


あたしの手首を離す素振りのないディーノ。
仕方ないなぁ。
あたしは反対側の手を携帯に伸ばして、アラームを消す。
やっと耳障りな機械音が消えて、代わりにあたしたちを包む、静寂。


「忘れてるなら、いい。ずっと忘れてて」


小さく身じろぎするディーノ。
なんだこいつ。
こんなにかわいかったっけ。

携帯のアラームを止めた指先で、ディーノの前髪を手持ち無沙汰にいじる。

くすぐったそうに目を細めるディーノ。
やっぱり好きだなぁ。


ん?
…忘れてて?










忘れられた事実
あれ?おかしいな





やっと覚醒した意識。



「あれ、あたし昨日別れ話しなかったっけ」


「…夢じゃねーの」




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