体重を掛けてあっさりと傾いた古いちゃぶ台の上、並々注がれたお茶が揺れる湯飲みもあたしの膝に倒れ込んだ。
熱い熱い。目の前では男のくせに黒い長髪を靡かせる奴がびっくりしてる。ざまあみろ。
膝が熱い。
早く服を脱がなきゃいけないのはわかってる。早く冷やさなきゃいけないのはわかってる。
沸騰したばっかのお湯で淹れたお茶だもん。膝はじんじんと疼くし、眉間には皺を寄せすぎて頭痛くなってきた。
「もういい。桂さんがその気ならあたしだって好きにします」
わざとらしく敬語に直して立ち上がる。ぞうきんで乱暴に畳みを拭いてちゃぶ台を隅に寄せる。捨ててやる。こんなもの。
一緒にご飯食べた食器もちゃぶ台もいらないもん。湯飲みだっていらないもん。家も引っ越すもん。
膝に張り付いた着物が気持ち悪くて少しだけ捲りあげたらそこは真っ赤。
「な、何をしておるのだ…!」
あたしに手を伸ばす桂は焦ってる。ざまあみろ。
「触んないでください」
言ってやった。言ってやったぞ。ほら、傷ついた顔する。あたしだってさっき同じ気持ちだったんだから。「触るな」って言われるのは辛いんだから。寂しいんだから。桂が手をゆっくり引っ込める。泣きそうだ。ざまあみろ。
立ち上がってお風呂に直行。シャワー使って冷水で冷やす。痛い。痛い。痛いなぁ。
背後から聞こえてきた桂の声。
ぐすぐす言いながらひたすら悪かった、って。ざまあみろ。
それにしても痛いなぁ。水ぶくれのできそうな膝を見て吐いた溜め息に、背後の桂があたしの背中を抱き締めた。
あそびごと