ふと目が覚めて窓の外を何気なく見たら、空は夜と朝が混じった不思議ないろをしていた。
上を向いていた体を、隣りでいびきかいて寝てる男に向ける。その胸板がこの寒い中外気に晒されてるというのに、彼は一向に起きる気配が無い。…疲れてるのかな、と思うと同時に夜の出来事が頭の中にフラッシュバック。年甲斐もなくはりきるから…と溜め息を吐いた口許がにやけて、誰かに見られてるわけでも咎められるわけでもないのに、無意識に口許を隠してしまった。
誤魔化すように彼の腕枕に頬を擦り寄せる。微かに香るおとこのひとの匂いと、シャワーと汗で薄くなったコロンの香り。晒された胸板を見ながら自分の姿を見れば、布団はほとんどあたしに掛けられていた。
布団を手繰り寄せて、彼の肩まで掛ける。少しだけくすぐったそうにみじろぐ彼を見つめていたら、気持ちがフワフワしてきた。
夜は一緒に布団を半分こしてたはずでも、毎朝目覚めると布団はあたしに掛けられている。…たまに彼は下半身すら晒して眠ってる時もある。正直それはいただけないと思う。でも、それも優しさ故だ。そう思うとあたしも優しい気持ちになれる。…恋って怖い。
ささやかなお礼の気持ちをこめて、腕枕のおかげでいちばん近い二の腕の内側に唇を寄せた。ひんやりしててやわらかい。それなのにちょっと押し当てれば固い筋肉があたしの唇を押し返す。
ちいさく、ちいさく吸い付いてアトを残したら、いつの間にか起きていた彼が真面目な顔をしてあたしの背中を引き寄せた。
「わ、」
「…なに盛ってんだ」
「違うよ!なんか、」
「ん?」
「…」
「ほら見ろ。…違わねーだろ」
背中を抱く腕はあたしが身動ぎしたくらいじゃびくともしない。腰を包む大きな手のひら。背中に沿う腕の筋肉。柔らかくてかたい。目の前には肩口、鎖骨、首筋。
「…違うよ、」
「まだ言うか」
家光さんの表情がいたずらなものに変わって、あたしの頬に啄むようなキス。
絡む足。膝があたしの太ももまでせり上がって滑る。
「ちょ、待って」
「なんだよ、俺と愛し合うことより大切なことか?」
…なんでこの人はこういうことをサラッと言えるのかな!
「おはようも言わせてくれないの?」
家光さんは一瞬驚いたように目を見開いたけど、次の瞬間には目を細めて声を上げた。
morning rhythm
「…おはよう、家光さん」
「あぁ…おはよう、なまえ」
手繰ったシーツの中には、あたしの世界が広がる。窓の外は既に快晴に変わっていた。
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title by Yukune Kariya special thanx!