ざあざあと響く窓の外は降雨。窓を叩く、屋根を叩く音が耳障りで聞いていたCDの音量を上げた。
落雷で消えた電気は5分前に復旧。流れるメロディはラフマニノフ。

ため息をついて携帯を開く。変わらず途切れ途切れに続く着信は既に14件目。


携帯の液晶が汚れるのも構わず、発信者の名前を指先でなぞる。

番号に羅列。その上に並ぶのは"家光さん"。一度指先で描くようになぞり、そして再び携帯を閉じた。


俯けば前髪を伝ってポタリポタリと水が落ちる。頭の天辺からつま先まで濡れて、あたしはぼんやりと窓の外の雨を見つめていた。

フローリングの床は濡れ、毛足の長い絨毯ももう使い物にならないだろう。


日本は嫌い。日本人であるはずのあたしは、何度呟いたかわからないそのセリフを奥歯で噛み砕いた。
こんなことなら一緒に日本に帰ってこなきゃよかったんだ。


家光さんの姿が脳裏にフラッシュバックする。奈々さんの額にキスを落とすその笑顔。
その直後にあたしを捕らえて、一瞬揺らいで逸らされた瞳。

昨日はあたしだけのものだったその手のひらが奈々さんの背中を抱いて、それでも弾き出されたあたしの答えはシンプルだった。やっぱりあたしは、家光さんがいい。



時間をおいて震え続ける携帯。


着信に混じって届いたメールが一通。



差出人は、家光さんだった。





『愛してる』







箱庭回廊



あたしが家光さんじゃなきゃダメなのは、どうして?

既に弾き出されている答えに聞いたけど、やっぱり返事なんてあるはずなかった。




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