「…ん」


目を開けたら、そこはよく知る場所でした。

…あれ、あたしラウンジにいたはず。
それでも自分が今いる場所は、毎日生活する自分の部屋。

ぐるぐる考えていたらとたんに気持ち悪くなったから、きゅ、と目を瞑ってやり過ごす。


「…目ぇ覚めたか」

「ん?」


幾分和らいだ吐き気に、声のした方を見る。そこには明らかに心配顔の家光さんがいた。


「熱が37度6分」


言われた意味を反芻。…なるほど、今朝の頭痛の原因はそれか!


「…で、ラウンジでぶっ倒れた」

「…スイマセン」


大きな手のひらがあたしの頭をわしわし撫でて、何を思ったのかその顔が近づく。


「ちょ、ななな何」

「いや、熱さげるには運動だろ」

「オヤジ!」

「熱でうなされてるなまえ見てたらさ、ほら、こんな」


家光さんは力の入らないあたしの手を取り、あろうことか自分の、スラックスの、その、股間に!


「…な?」

「ななな何が"な?"なのかわかんない!」


家光さんがあたしに覆いかぶさって、白いシャツのボタンを弾く。え、ほんとにするの?

背中に回された手が簡単に下着のホックをはずして、開放された胸を這うようにその熱い唇が滑る。


「ちょ、家光さ…!」

「…辛いんだろ?だから、なまえは何もしなくていいから」


唇から零れる、甘い吐息混じりの低音。その唇が丁度先端を捕らえてなぶる。熱い。あたしの体温のせいか家光さんの舌が熱いのかはわかんないけど!


「…んん!は、ぁ」


片方は唇、片方は指で。家光さんは穏やかな表情で目を瞑っている。ずるい!なんだその顔!胸の奥がきゅうってなる。


「…ん!」

「…濡れてんじゃねーか」


ぬるり、といつの間に脱がしたのか足首まで下ろされたパンツスーツがぐしゃぐしゃで。そんで家光さんのゴツゴツした指があたしの、その、ぐちゃぐちゃに溶けてる部分をなぞる。


「だって、ぁ、ひゃ」


くちゅくちゅ、耳を塞いでも止まらない気がするほど恥ずかしいおとが響く。頭がおかしくなりそう。


「きゃ あ、ふ」


人差し指と中指があたしの中を揺さぶって、家光さんは変わらず幸せそうな顔。ちょ、指はげしいから…!!


「も、やぁ あ!」


びくん、一度大きく肩が揺れて、視界はぼんやりと滲む。あ、あつい…


「中、あっついな」

「んぅ…」


額の汗を拭ってゆっくり目を瞑る。ずるりと抜き取られた指。このまま眠ってしまいたい、なんて思ったのもつかの間。耳元で聞こえた音に目を見開いた。


「なななななんで脱いでるの!」


耳元で聞こえたのはジッパーをさげる音。視界にはくつろげたスラックスと、その、結構規格外な大きさの家光さん自身で、嗅覚を刺激するのはオスの匂いだ。


「挿れんのは辛そうだから舐めて欲しいなー」

「かわいく言ってもダメ!吐く!」

「なまえは下のお口が最高だけど、上のお口もイイからな」

「…オヤジ!」


反論しようと息を吸い込んだら、ちゅ、とかすめるような小さなキス。…ずるい!

目の前で家光さんが濡れる指先をベロリと舐めて笑った。






上昇中



「も、む り」

「!待て、待て!洗面台まで待、」

「う、」

「あああああああ」




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