「だからね、やっぱりあんまり奥までいれると痛いんだって」

「奥奥って言うけどな、奥こそ気持ちいーもんなんだって」

「なにを!じゃあ貴様は奥までいれられたことあるのか!」



※セックスについての議論



久しぶりに門外顧問のアジトに来た。俺の後ろには獄寺くんと山本がいる。…俺は嫌な汗をかいていて後ろを振り向けない。理由?目の前の重厚な扉の向こうを想像してくれよ。


「俺はいれんの専門ですぅーお前は静かにしてろ」

「いーやーだー!もう痛いのはイヤなの!」

「ちゃんと気持ちいーとこも擦ってやってんだろ」

「全部気持ちいーのがいい!」


…ここの扉は薄いんだろうか。それよりも考えなきゃいけないのは、扉の向こうの声だ。男の声は明らかに俺の親父だ。そして女の声は親父の部下だ。…不倫?ふと頭に浮かんだ疑問。後ろでは2人が固まっている。


「獄寺くん、山本…出直そうか」

「…そうっスね」

「あーでも親父さん若いのな!」


うん山本、それは今言わなくても良かったんじゃないかな。俺は後ろを向けない。この2人今どんな顔してるんだ。恥ずかしいというか情けないというか、すごくいたたまれない。


「…あ、親方さまー息子さん来てる!間違えたボス来てる!」


引き返したくても後ろを振り向けないから引き返せない、そんなときに目の前の扉が豪快に開け放たれた。


「え、えっと」

「耳掃除してもらったらスッキリ!ボスの声が聞こえました!」


…あぁ!耳掃除!



※…ではなかったようです。



部屋に入って辺りを見回す。長い革張りのソファに座った親父。ローテーブルの上には綿棒のケースと耳掻きがある。横のゴミ箱には丸められたティッシュ。…なんだ、よかった…!あからさまにホッとする俺に、親父の部下であるなまえさんはわたわたと忙しない。


「あたしお茶いれてきます!」

「あ、いいよいいよ。様子見に来ただけだから、俺たちはもう帰ります」


勝手に恥ずかしいこと想像して勘違いなんて情けない俺!俺はボスなんだからファミリーも門外顧問も信頼しないとね!


「じゃあ帰ろうか、獄寺くん、山本」


ソファに座ったままの親父はニカッと笑ったまま。その腿を隠すように広げられたジャケットから、なまえさんに対する気遣いが見え隠れする。…なんだ、親父結構いいヒトしてんじゃん。すこしだけ誇らしくなったところで車に乗り込んだ。



※…と思いきや、本当はこいつらヤっちまってました。



「かかか帰った?!」

「おう」

「あっぶねぇ!まさか本番中に来ると思わなかった!」

「気持ち良過ぎて気配気付かなかったしな」

「でもしゃべる余裕はあったけどね!」

「なーに生意気なこと言ってんだ、よ!」

「う わ、ぁ!」



車に乗ったまま3人で顔を見合わせる。「俺一瞬逃げたくなっちゃったよ」と笑って言う。でも2人はニコニコした笑顔?で頷くだけ。とりあえず門外顧問チームは今日も平和なようでよかった。



※まぁ確かに平和ですけどね…



(ゴミ箱周辺、イカ臭かったよな)

(親父さんの股間、ジャケットの上からでもわかるくれーには膨らんでたのな)

「でも親父にもあーいうとこあったんだなぁ」

(十代目はわかってるのかわかってないのか…!)

「でもあそこってみんな仲いーんだな」

(…にしても十代目はあのイカ臭に気付かなかったのか?!)

「本当だよね!耳掻きしてあげるくらいだもんね」

(あぁぁわかってないんだろうなー十代目は。純粋なんだ。十代目はイカ臭もわからない程純粋なんだ)

「…獄寺くん?大丈夫?」

「あ、はい!イカが頭から離れなかっただけっス!」

「…イカ?」



※車の中がイカに支配されている頃



「ねーでも気付かれたかな」
「ツナは大丈夫だろ」

「あたしのカモフラージュのお陰ね」

「綿棒と耳掻きぐれーじゃ騙されねぇような気がすっけどなぁ…」

「…獄寺さんと山本さん?」

「…さーて続きな、気持ちいーとこ全部擦ってやる」

「あれ?…あれ?」

「俺に任せろ」



※不倫はこっそりね!



「あ、親父に渡す書類あったんだ」

(?!)

「…ゴメン、引き返そっか」

(?!!)




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