「…誕生日おめでとうございます」
日付もあと数時間で変わるだろう、という微妙な時間。
彼女は突然やってきた。
「…ああ…ありがとうな」
しかし彼女は何故か不機嫌だ。
その理由を探るべく、彼女が手に持っている小さな包装に視線を落とす。
が、それに視線をやった瞬間にそれは俺の顔面に飛んできた。
「忍者に向かって通用すると思ったのか」
「当たってるけど」
「…わざとだ」
投げつけられたそれをマジマジと見つめる。
手のひらサイズの小さな包装。
「…当ててやろうか」
「痔の薬ですが何か文句でもありますか」
「……」
彼女は依然として不機嫌なまま。
がさごそと包装紙を破れば、普段は金額的に手の届かない薬の外箱。
こんなに小さいのにあの金額ということはものすごく効き目があるんだろう…。
「どうすれば全蔵が喜ぶかわからなくて」
「ああ」
「結局プレゼントはそれになった」
そうか。つまり。
女心はよくわからんが、何か今すごく彼女がかわいく思えた。
たぶんそういうことなんだろう。
曰く、結局プレゼントに痔の薬を選んでしまった自分が悔しい、と。
「……かわいいな」
「………もっとかわいいこと言ってあげようか」
顔を上げれば彼女は赤い顔でそっぽを向いている。
これが、ツ、ツンデレ…?!
「…頼む」
「……薬、ぬってあげよっか」
スパイラルハニー!
「おっまえ、どこでそんな技身に付けてきたんだ!」
「痔主なんか知り合いにアンタぐらいしかいないわァァァ!!」