夏用に新しいワンピースを買った。折角だから見せたくなって、買ったばかりのそれを着て家を出る。
外は梅雨らしく大降りだった。
ノースリーブのワンピースはすごく寒々しくて、実際すごく寒かったけど、どうせ移動はお隣の家なんだからと傘も差さずに飛び出した。


「な、何をしてるんだ!」

「えへー!どう?」

「いいから早く中に入れ!」


呼び鈴を4回連続で押したら、こたが勢い良く扉をあけた。わかりやすい合図は小さい頃から何も変わらずに継続中だ。
お隣のこたとは同じ年。同じ高校に通っている。


「風邪をひいてからでは遅いんだからな」


呆れたように言うこた。学校ではみんなに散々いじられてるみたいなのに、わたしといるときにはそんな気配を全く見せない。幼馴染みって少し不便だな、と感じる。


「だって見せたかったんだもん」


小さい頃から、ずっとわたしたちは何か珍しいものや面白いもの、きれいなものを見つける度に見せあいっこをしてきた。
それでも高校生になってまで、そんなお宝を探す冒険なんてしない。

だからわたしはこうして、新しいものを手に入れる度にこたに見せに来る。


「自分で選んだのか?」

「お母さん」

「だろうな」

「どういう意味よ」

「色が、お前に良く似合う」


自分で選ぶと派手になるだろう、と付け足したこたは、わたしの顔がちょっとだけ赤くなったことには気づいていないようだ。


「…似合う?」

「似合う。が、天気は選べ」


こたらしくなく、もっともなことを言う。それが何故だか無性に気にくわない。


「こたこそ、夏に向けて髪でも切ったら?」


微かな抵抗として憎まれ口を叩いてみたけど、こたは優しく笑うだけ。それがすごく悔しくて、わたしはこたの枕に顔を埋めた。


「ふて腐れるな。今年はそれを着て来てくれるんだろう」


その言葉に、思わず顔をあげる。
毎年こたの誕生日には二人で出掛けているのだ。元々は夜にこたのサブライズパーティーをするための連れ出し要員として遊んでいただけのイベントは、もう既に毎年の決まり事のようになっている。


「…いつまで、こたの誕生日に二人で遊べるのかな」


不意に口をついて出てしまった言いも知れぬ不安。
見つめる先のこたはほんのちょっと驚いた顔をしたけど、すぐに笑ってわたしに新しいタオルをくれた。


「お前が望んでくれるなら、ずっとだ」


タオルでまだ少し濡れている腕を拭く。こたは仕方なさそうに、他のタオルでわたしの頭を少し乱暴にかき回した。







はこにわせかい






―誕生日、晴れるといいね

―雨が降っても、二人で過ごすことに変わりはないだろう




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