飴玉色の、
▽日常 (1/1)
『ただいまー』
「おかえりなせェ」
玄関の扉をを開けて迎えてくれたのは大学生の彼氏、沖田 総悟。
私たちは所謂同棲というものをしている。
『あー今日も疲れたー』
「また例の上司ですかィ?」
『うん……あ、ご飯まだだよね?ごめん今から作るね』
「それなら俺が作っておきやすんでうみは先に風呂入ってなせェ」
『え…、私が作るよ…?』
「いいから、たまにはゆっくりしな」
『うーん……、じゃあ…お願いできる?』
「構いませんぜ」
総悟の言葉に甘えて私は着替えとタオルを持って脱衣場へ向かった。
たまに優しいんだよなぁ。
そんなことを考えながら、湯船で100かぞえた。
……のぼせかけた。
『あ、すごい』
お風呂から上がってリビングに行くと、美味しそうな料理がテーブルにならんでいた。
『これ総悟が作ったの?』
「簡単なものばっかだけどねィ」
『ううん、すごいよ』
感心して、テーブルにつこうと思ったら総悟がそれを阻止し、腕をひっぱる。
『ちょ、総悟?』
「その前に、」
ゴォー。
やや熱い風が頬に当たる。
「髪、乾かさないと風邪引くぜィ」
『はーい』
カーペットの上に座らされ、総悟が私の後ろにあるソファーに座って髪を乾かしてくれる。
それがなぜか無性に嬉しくて、ちょっとニヤけちゃったのは秘密。
「相変わらず髪綺麗だねィ」
『そー?』
総悟が髪を手で梳かしながら言った。
「はい、出来やした」
『ありがとう』
総悟がブローするといつもより髪がさらさらになったような気がする。
ほんと、器用だなぁ。
『じゃあ、待たせてごめんね。ご飯にしよっか』
「待ちなせェ」
立ち上がろうとしたら、後ろにいる総悟に抱きしめられた。
動きがとれなくなる。
『……総悟?』
「…………」
甘えたいのだろうか。
振り向こうとしたら、首元に微かな痛みが走った。
……まさか、
『ちょ、総悟くーん…?』
「何でさァ」
『あの、これ…』
首元を指差しながら振りかえると、総悟がニヤリと笑った。
やっぱり…っ、
「痕、つけやした」
『えぇ、こんなわかりやすいところにっ』
後の言葉を紡ごうとすると、口が塞がれた。
しかしそれは一瞬で、すぐ離された。
反論しようと思い口を開くと、また総悟の顔が近づいて唇が重なった。
今度は、深いキス。
『んぅ……〜、っは…』
やっと唇が離れ、総悟を睨むと勝ち誇ったような顔で私を見ていた。
……ちくしょう。
「静かにしなきゃ、近所迷惑ですぜ?」
耳元で甘く囁かれ、ビクリと身体が揺れた。
『…誰の所為だと思ってるのよ』
「悪いねィ、ついいじめたくなったんでィ」
さっきまでの優しい総悟はどこへやら。
少なくとも今私の目の前にいる総悟はドSスイッチが入ってしまったようで、優しい総悟くんの面影はどこにもない。
「……うみ」
『な…に…っ』
耳を甘噛みされ、一瞬身体が震える。
「…シたくなった」
『は?』
いつの間にか正面で抱き合っている形になり、真面目な顔で総悟が言った。
いきなり何言ってるの…っ
『ストップ!まだご飯…っ』
「そんなの後でいいだろィ」
『あっ明日早いから!』
なんとかして総悟を止めようとするが、なかなか言うことを聞いてくれない。
ホントに明日早いのに…っ!
尚もあがいてる私の手首を総悟は掴み、そのまま床へ押さえつけた。
『もう無理でィ…観念しなせェ』
耳元で響く総悟の声が、いつもより低く聞こえた。
飴玉色の日常
(これが私の"当たり前"です)
―――――――
甘々にするつもりがただの変態になっちゃった…
← →
(しおり/一覧)
(戻る)