▽誘惑 (1/1)




「……………遅ェ」



イライラしながら時計を見ると、すでに23時を回っていた。

……うみが遅い、帰って来ねェ。
いつもなら遅くても20時には絶対帰って来るのに。
そうでなくても必ず20時以降になるときは連絡が来る。
なのに今日はそれすらもない。
一体どうしたんだ。

柄にもなく心配していた。
何かあったのではないだろうか。
だとしたら……


…良からぬ事が頭を過る。

本格的に心配になり、廊下に出て玄関へ向かう。
その時、



ガチャッ


『ただいまぁ!』



今まさに開けようとしていたドアが開き、うみが帰ってきた。
よかった、と安堵のため息を短くつく。



「こんな遅くまでどこほっつき歩いてたんでィ」



すこし低めのトーンで言うと、うみはえ〜?と言ってなかなか答えない。

様子がおかしいなァ、と思っていると、



『そーごっ』

「っ!」


ドサッ



いきなりうみに抱きつかれ、押し倒された。
場所が場所なだけに、背中が痛い。
だがそれよりもうみが抱きついてきたことに驚きほとんど痛みは感じなかった。
本当に今日はどうしんだ。



『そーごぉー』



俺の胸板に頬をすり寄せて嬉しそうに言ううみ。

すげー可愛い、襲いたい。
だけどうみに問い詰めなきゃいけないことがある。
まぁ、大体わかるがとりあえず確認しなきゃならねェ。



『ねむいよーそーごぉ〜…』

「、うみ」

『ん〜…なぁに?』



やべェ、今の可愛過ぎる…じゃねーや。



「お前…、酒飲んだだろィ」

『えー?』



紅潮した頬、いつもより高い声のトーン。
なにより酒臭い。



『ちょぉーっとねえ、部長が飲めって言うからー』

「……やっぱり…」



はぁ、とため息をつく。
その様子だと結構飲んだなコイツ。

けど、問題はそこじゃない。



『そーご…、そーご…』

「…っ、やべ…」



そう、問題は俺の理性との戦いだ。

とりあえず、この体勢をどうにかしてほしい。
そんなに強く抱きしめられたら俺の理性が持たない。

襲いたい衝動を抑え、上半身だけ起き上がった。



『あれぇ…そーご?』



うみも抱きついたまま起き上がった。
いつになったら離れるんだ。



『ねー…ねむいよ』

「……ベッド行くかァ」



よっこいせっと立ち上がると、うみの手が離れた。
すこし名残惜しい気もするが、すこし冷静になれた。
と思いきや、



『………っこ…』

「?」

『そーご、だっこ!だっこして?』



ん!と手を伸ばしてせがむうみ。
俺はというとうみが可愛過ぎて言葉もでない状態。

ただでさえ可愛くて仕方ないのに、上目遣いはやめてほしい。
殺人級だ、俺を殺す気か。



『そーごぉ…』

「…わかりやした」



うみを所謂お姫さまだっこでベッドまで運ぶ。
その間もうみはぎゅうっときつく抱きつき、ベッドの上に降ろしてもなかなか離れなかった。



「ほら、早く寝なせェ」



なんとか理性が保ってる内にうみを引き剥がし寝かしつける。
が、うみは頬を膨らませ、なかなか寝ようとしない。
それどころか目も閉じない。



『やーだっ』

「なんでィ」

『そーごにちゅーしてほしい!』



は……?幻聴?



「………、わんもあ」

『だーかーら、そーごにちゅーしてもらうまで寝ないぃ!』

「…………」



マ ジ で ?

一度も自分からキスしたことないうみが?
あの真面目なうみが?



『はーやぁく!』

「ホントにいいんですかィ?」



念のため聞くと、うみはしばらく考えて、



『ん!いいよっ』



最高の笑顔で言われた。

いやいやいや…、いくらうみにいいって言われてもダメだ。
意識ないときにズルいって後から怒られる、うみはキレると怖いからなァ…。

なんて色々考えていたとき、



「……っ!?」

『もーらい』



うみにキスされた。
そしてうみは満足そうに笑うともう一度唇を重ねた。
今度は長く、舌も絡ませて。



『んっ……、』

「…っ、…」

『ふ…っんぅ…っ』



ヤバい、もしかしなくてもヤバい。
理性が崩れそうだ。



『…っはぁ…っ』



やっと唇は離れた。
だが俺の理性との戦いはさっきより激しくなる。



『…はぁ…っは…ぁ』



荒い息遣い、紅潮した頬、涙目、上目遣い。
これに強い男なんていないだろう。



『…そーごぉ……』

「…?」

『今度はそーごがして?』



ガラガラ、理性が跡形もなく崩れる音が聞こえた気がした。

もう、止められねェかも。



「うみ」

『んー?』

「言っとくけど、誘ったのお前だから」

『?』



あーもう、可愛らしく首傾げんじゃねーよ。
余計歯止めがきかなくなるじゃねェか。



「こっから先、寝たくても寝れると思うなよ」



どうやら俺もスイッチがはいってしまったらしい。



「……覚悟しなせェ」





さぁ、明日の朝起きたとき、ひどく驚くであろううみをどういじめてやろうか。















飴玉色の誘惑


(お前が可愛いからいけないんでィ)





―――――――
……駄文orz

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