青空レモンティー
◇借りた借り [1/2]
『はー疲れたっ』
「…………」
『でも買えて良かったです!』
ね、沖田さん!と一歩先を歩いている彗が言った。
彗は疲れたって言ってる割りにはニコニコしている。 ていうかコイツはいつもニコニコしてる。 たまに、うへへ、とか変な笑い方するけど。 でもコイツには笑顔が一番だなって柄にもないことを思ってたりする。
『あ、甘味屋さん』
彗が指差した先には最近出来たと噂の甘味屋。
つーかこの歳で"屋さん"って。 確か俺とひとつしか違わねェよな…。
『沖田さん……』
「なんでィ」
『お金くだs「持ってねーよ」
…ホントは持ってるけど。
『いや、本当は持ってますよね?』
「持ってねーって」
『じゃあ……』
『…飛んでください!』
「は?」
飛ぶ? 何言ってんだ。
『その場でジャンプするだけですから!はい、せーのっ』
チャリーン
『ほるァ!やっぱ持ってんじゃないですかァ!』
「不良かてめェは」
なんつーやり方してんだよ。 女子か。
『沖田さん、団子食べたくないですか?』
「別に」
『あんみつ食べたくないですか?』
「特に」
『もうエリ●様になりきるのは止めてください!』
彗は隊服を掴んで言った。
甘味屋行きてーなら言えばいいのに。 さしずめ俺が反対すると思ってんだろうなァ…。
「…行くか」
『えぇ、行っちゃうんですかー…』
「彗は行かねーのかィ」
『まだ帰りたくないです、屯所に』
「誰が屯所って言ったんでィ」
『え…、ということは…?』
「甘味屋行きてーんだろィ?ホラ、行くぜィ」
『ま、マジでかァァアア!!』
ひゃっふーっと喜ぶ彗を見て、ひそかに笑った。 俺がタダでお前連れて甘味屋なんか行くと思ったか。
これからするであろう彗の反応を思い浮べて、クスリと笑った。
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