青空レモンティー

◇お出かけ日和 [1/1]



「はい、彗ちゃんの」

『なんですか、コレ?』


先輩から封筒を渡されました。
なんだろコレ、まさかのラブレター?


「いや違うから」

『え、先輩もエスパーだったんですか!?』

「それも違うからね」


ですよねー、エスパーだったら沖田さんとかザキヤマとか…沖田さんとか、あと沖田さんとかと一緒ですよね。


『で、この封筒なんですか?』

「お給料よ」

えええええ!?


屯所内にあたしの声が響き渡りました。
しかしお構い無しに先輩は続けます。


「彗ちゃんが働き初めて、もう一ヶ月でしょ?」

『はぁ…そうですね』


思い出したように言うと、先輩は目をキラキラさせてこう言いました。


「だから、いっつも一生懸命働いてくれてる彗ちゃんにご褒美!」

『先輩……!』


なんだか先輩の優しさに泣けてきそうです。てか今なら泣けます。


「じゃあ、これで欲しいもの買いな」

『はいっ』


そして先輩はあたしの部屋から出ていった。
…んだけど、




『……どうしよう』


先輩にはああ言われたけど、正直欲しいものってないし、第一道がわからないから買い物なんて行けない。

うーん、ザキについてってもらおうかなぁ。

そう考えたんだけど、ちょうど2日前潜入捜査で一週間屯所に帰ってこないと言ってたことを思い出した。


『ゔー……』


先輩は忙しいし、土方さんも忙しいし。
銀さんは朝イチで仕事入ったって、さっき嬉しそうに屯所の前を歩いて行ったし…。

他に江戸に詳しいひと……。

そう思ったところで気づいた。
まだあのひとがいるじゃないか…!

まだ市中見回りに行ってないであろう隣の部屋の住人を尋ねるべく、自室から飛び出た。





◇  ◇  ◇



『沖田さんっ』


隣にお住まいの沖田さん家の障子をバンッ、と音を立てて開ける。
案の定部屋の中にいた沖田さんは煎餅を食べながらだらだらとテレビを見てました。
しかし、その視線もあたしの登場によりこちらに向けられる。


「何しに来たんでィ」


沖田さんは表情ひとつ変えずにいつもの素っ気ない言葉を返してきました。
Mだったら喜ぶだろうなぁ、こーゆーの。


『もっかい町に連れてって下さい!』

「は?」


だーかーらー!


『前みたいに、かぶき町に連れて行って下さい!』


両手を顔の前に合わせて懇願する。

いいって言ってくれるかなぁ、機嫌が悪かったらダメだろうな……。
でもやっぱりあのドS王子の沖田さんだから…。

あ、土下座しろ、とかだったらどうしよう。
でも沖田さんなら言い兼ねない……


「わかりやした」

『っえ!?』


今なんと?


「しょーがねーからついて行ってやらァ」

『マジでかァァア!』


意外にもすんなりオッケーが出て目が飛び出そうです、目から鱗です。


『やったああ!沖田さんとお買い物ー!いえーい!』

「…そんなに喜ぶ程かィ?」

『はい、散歩とか外歩くのだいすきですし!有難うございます沖田さん!』


テンション急上昇です。


『今から着替えて来ますね、ちょっと待っててくださいっ』


そう沖田さんに言い残して、足早にすぐ隣の自室へ向った。



今日も、江戸の空は雲ひとつなく晴れ渡っています。






























お出かけ日和


(ところでなんでかぶき町?)
(お店いっぱいありそうだし、楽しそうだからです!)
(まァせいぜいはぐれないように気をつけな)
(…………、はい!)
(その間はなんだ)

方向音痴はステータスです







―――――――
またまたデート(?)編!
次回続きます

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