3週目/タナ子下僕ルートまでスキップ/柚葉 ED 6
>>3週目/タナ子下僕ルートまでスキップ
お前が俺の下僕となる家だよ。
そう言うと女の子は子首を傾げた後、こくりと頷いた。
女の子「何をいたしましょう?」
1 俺の部屋を片付けろ
2 ベッドに座れ
3 まずは適性検査だな
>>俺の部屋を片付けろ
下僕としてどれくらいの技量か確認してみたかったので、俺の部屋を片付けさせてみることにした。
と言っても定期的にカーチャンが勝手に掃除をしているので、あまり散らかってはいない。
唯一散らかっていると言えば、レポートの資料として使った本が床に積んであるくらいか。
これを昔から愛用している本棚に戻す作業ならば、さして難しくも無い。単純作業だが、単純作業だからこそ技量も確認しやすいだろう。
俺「それじゃあ、床に置いてある本をあの本棚にしまってくれ」
本棚(女の子)に本を本棚にしまってくれ、なんて変な感じだ。この子も違和感を覚えたりするのだろうか?
女の子「はい。がんばります!」
躊躇うかと思ったのだが、女の子はあっさりと了承して本棚の方へ向かった。
さて、と。ベットに適当に腰を下ろして女の子が片付ける様子を見る。
確か、一番上に積んであった本は少し大きめな辞典だったと思うが。
女の子「はわわっ……!」
ぐらり、ぐしゃっ。
女の子は予想以上に本が重かったのか、重さに耐えきれずバランスを崩した。ご丁寧に本の塔まで崩壊させてくれたようだ。
しかしそれでも一応片付けようという意志はあるみたいで、片付けを再開する。
女の子「んっ、よいしょ……ふわっ!?」
ごんっ。どざとざどさっ。
今度は何をしでかしたかと思えば、本棚に自分の頭をぶつけ、しまってあった本の雨を浴びている。
辺りが本で散乱していく。
女の子「……っ」
これは片付けるどころか、どんどん散らかっていく気がする。
1 もういいよ
2 使えないな
3 もう少し様子を見る
>>落ち着くのを待った
女の子が落ち着くまで、俺はただ静かに待った。
女の子「あの、ありがとう、ございました」
俺「怪我はないか?」
女の子「はい」
こくん。と頷いたので、俺は体を離した。
?「俺ちゃぁんっ!」
ぎゅむうっ。
勢い良く部屋の扉が開いたかと思うと、体が柔らかいものに締め付けられた。
俺「っ、苦しいって。離してくれよ」
?「地震大丈夫だった?怪我はない?」
ぴちぴちの肌にくりくりとした大きな瞳。
軽いウェーブがかかった淡い栗色の髪。
豊満な胸にくびれたウエスト、桃のような美尻。
見た目20代のこの女の人は、確かに――。
俺「離してくれよカーチャン……」
俺の母親だった。
母「んもぅ!かーちゃんじゃないでしょう?お母さまか、美琴(ミコト)ちゃん!」
ぷぅっ。と頬を膨らませているのは確かに俺を産んだ母親だった。
見た目だけなら20代だが、実年齢は……。
美琴「あらあら。俺ちゃん、どこか痛いんじゃなぁい?」
流石母親と言うか、鋭いと言うか……。
1 ちょっとだけ、な
2 いや、痛くないよ
3 それよりカーチャン
>>それよりカーチャン
俺「それよりカーチャン……」
俺はカーチャンの左頬を見て顔を顰めた。
途端にカーチャンの端正な眉が下がり、しゅん、と子犬のように縮こまった。
美琴「だっ、大丈夫よ?」
俺はカーチャンの顔を両手で包み込むようにして良く見た。
左頬には何かで切れたかのように一筋の赤い線が入っていた。流れ落ちる程ではないが、じわじわと血は溢れてきている。
美琴「俺ちゃんに怪我が無れば良いわ」
ふふっ。とカーチャンは笑った。
本当に、俺より自分の心配をしてくれよ。でも俺は、そんなカーチャンがカーチャンで良かったとは思っている。
思ってはいる。が。それとこれとは話が別だ。カーチャン。俺はその微笑みに騙されないぞ。
俺「消毒しなきゃな」
その言葉にカーチャンが、びくり。と体を跳ねさせた。
美琴「だぁいじょうぶよ?これくらい。ねっ?」
1 問答無用。消毒液を取った
2 うっ。カーチャンの目が……
3 痛ってぇ!背中触るなっ!
>>うっ。カーチャンの目が……
美琴「俺ちゃぁん……」
カーチャンの目がうるうるしている。俺を見るくりくりの目が、懇願と怯えの色を滲ませている。
いや。それでもここは心を鬼にして、鬼にして、鬼にして。
俺(……無理だ)
俺の肩の力が抜けたのを見て、カーチャンが小さく息を吐いた。
カーチャンは消毒液が嫌いだった。ビリビリとする痛みが嫌だ、と大人気なく拒否するのはいつもの事だ。それもこちらは把握済み。
しかしその度に消毒液を付ける付けないの攻防をするのだが、今日は俺の負けだった。
美琴「ありがとう、俺ちゃん」
偉く上機嫌なカーチャン。
だが、俺はただ引き下がりはしない。傷をそのままにしておく事だけは許せない。
美琴「俺ちゃん?……っ、あ、やぁ、いったぁいっ!」
実際は雑菌がどうのだとかで良くないんだろうけど、俺はカーチャンの傷口に舌を這わせた。苦い味が口の中に広がる。
俺「消毒液が嫌ならこれぐらい我慢しろ」
美琴「んぃ、あっ!やぁよ、やぁっも、俺ちゃんっ」
びくびくとカーチャンの体が跳ねる。本当にカーチャンは痛いのが駄目だ。ぎゅ、と俺の両腕を握っている手に力が籠もる。
美琴「はっ、あ、んんっ、びりびり、す、んいやぁ!」
俺「……ッ、は」
最後にもう一回傷口を下から上へ舐め上げて唇を離した。じわ、と少しだけまだ血が滲むようだが、絆創膏でも貼っておけば良いだろう。
美琴「酷いわぁ、俺ちゃん……」
くたり、とカーチャンが俺に寄りかかってきた。
1 大人しく従わないのが悪い
2 大丈夫か?
3 ん?呼び鈴が鳴ってるな
>>大丈夫か?
俺「大丈夫か?」
美琴「大丈夫じゃないわよぅ」
カーチャンは、いたぁい、と言いながら綺麗な形の唇を尖らせた。
美琴「でもありがとう、俺ちゃん。心配してくれたのよね?」
その言葉に俺は照れ臭くなって、まぁ、とぶっきらぼうに返事を返した。
美琴「あら?あらあら。俺ちゃん、このかわいい子どうしたの?」
カーチャンは女の子に気付いて女の子へと近寄った。
体にあった重みが消えて、少し名残惜しかった。いや、マザコンじゃないぞ!
女の子「えっと…」
俺「本棚」
そう言うとカーチャンは怪我をしてない方の頬に片手を添えながらまじまじと女の子を見た。
美琴「あらあら珍しい本棚ねぇ」
俺「そう言うわけだからよろしく」
美琴「なんだか娘ができたみたいで嬉しいわぁ。ねぇ、お名前は?」
名前。そう言えば、名前無かったな。まぁ本棚だったし。
女の子がじっと見てくる。名前か……そうだな。
俺「タナ子」
美琴「変わったお名前ねぇ」
確かに、変わった名前である。
本棚から取ったんだが……嫌、だったか?
タナ子「…………」
女の子――タナ子は白い頬を桃色に染めて照れ臭そうに笑っていた。
良かった。俺は小さく息を吐き出す。
そんなこんなで本棚を組み立てたはずが女の子ができあがっていたわけだが、タナ子は無事に俺の家に住むことになった。
〜一冊目終了〜