14週目/探偵局ルートまでスキップ/BAD ED 12
>>二階の東から三つ目の部屋に行く
俺(……何だ?)
ぞくっ。と、背筋に嫌な感じ。こう言う感じは良くない。俺は部屋の扉を開けずに一旦脱出口へと身を隠した。
面白い事に脱出口には色々な仕掛けがある。例えば、そう。普通の脱出口の通路より狭いが、階と階の間に通路がある、とか。
俺(ご丁寧に定期的に覗き戸もあるしな)
恐らく脱出口を使用した時に、下の階や上の階の様子を見る為に作られたのだろう。二階と三階の間にある脱出口へと行き、先程入ろうとした部屋の上へと目指す。
俺(ここら辺だな)
スッ。と、少しだけ覗き戸をずらす。と。
俺「ッ!?」
思わず漏れそうになった声を両の手で押さえる。一気に冷や汗が溢れ出た。鼓動がドクリドクリと早く、強くなる。
グチュリ。ズチュ。と、粘り気のある水音が響く。その音を立てている者の姿は見えないが、その音を立てているモノの姿は見える。
俺(何てモノを食っているんだよっ!?)
赤黒い斑模様のテーブルクロスの上には、青年と思しきモノが横たわっていた。顔立ちは端整だ。美青年だった。と、言っても良いだろう。
美青年の体は皮膚が剥がされ臓腑が見えていた。そこをナイフとフォークがステーキでも切り分けるかのように動き、刺し、引っ込んだ。クチュ、ニチャ。と、咀嚼する音がまた鼓膜に響く。
ふと視線をずらすと、これまた端整な顔立ちの美青年達が白いテーブルクロスの上に横たわっていた。
もしもあの時部屋に入っていたら、危なかったかもしれない。俺はこの部屋は危険だと判断して関わらないようにしようとした。
1 けど、許せねぇ!
2 けど、いつか暴いてやる!
>>けど、いつか暴いてやる!
今、俺一人でこの状況をどうにかするのは難しいだろう。ここは一先ず撤退だ。小型カメラで何枚か写真を撮り、覗き戸を閉めた。
ただの質の悪い収集家だと思いきや、これはとんでもない事になりそうだ。
俺「優都なんかが行ったら大変だろうな……」
普段はふざけた女装をしているが、男のなりをすればそれなりの良い男だ。身内の贔屓目を無しにしても、そう思う。正直な所、兄貴の優都は格好良いし、尊敬もできる。だからこそあの女装の姿が腹立つんだよな。
俺(女装は女装でモテるし男は男でモテるし。あの女たらしがっ)
あー、思い出してきた。確かあれは、俺が高校生の頃。
当時、俺にはまだ好きとかと言うわけではないが、気になる女の子が居た。しかし事もあろうか、優都は見せ付けのように女の子と親しくなっていった。そして付き合った。俺ショック。
優都はそんな事を一回とかではなく数回繰り返した。数回だぞ、数回。偶然にしてはありえない。意図的だとしか思えない。
ちなみに、別れた後は女装のユウとして女友達になっているのだから、ふざけるのも大概にしろと言いたくなる。
俺(って、今はそんな事を考えている場合じゃないか)
一先ず自分の命があり、五体満足である状況に安堵した。
1 このまま脱出だ!
2 三階の南から三つ目の部屋に行く
>>このまま脱出だ!
鞠華さんには悪いが、目的の日本刀は手に入れた。このまま脱出しよう。
脱出口を通り、来た道を戻る。
俺「……おかしい」
同じような景色が続く。いや、当たり前と言えば当たり前なのだが、違和感を覚える。
俺「さっきから同じ所を歩いている気がするな」
思わずそう呟く。と、通信機から声がした。
鞠華『俺くん、やはりそうですの?』
俺「ああ、やっぱり俺の位置変わりませんか?」
鞠華『ええ。ずっと同じルートを辿っていますわ〜』
もうちょっと早く言ってほしかったかな。かれこれ十分位は歩いていた。
タナ子『追っ手対策用の通路に入ってしまったのだと思います』
俺「って事は、トラップがあるな?」
タナ子『はい。わたしも幾つか確認済みです』
迂闊に進むと厄介だな。取りあえず壁伝いに歩くか。
俺「ん?」
ガコッ。壁がへこみ、バランスを崩した俺はそのまま倒れ込んだ。どうやら違う通路に行けたようだ。
俺の目の前には入り口が三つあった。
鞠華『右の道から出られるみたいですわ〜。左の道は水攻めのトラップですの』
タナ子『左の道から出られます。右の道は槍が出てきて危ないです』
おいおいどういう事だよ。
二人の話を聞くと、どっちもトラップがあるじゃないか。
俺(しかしまぁ、こう言う時こそ俺の出番、か?)
考えろ、俺!
1 右の道だ!
2 左の道だ!
3 わっかんねーよ!
>>左の道だ!
実際にこの場所を通ったであろうタナ子の情報を信じる事にした。
左の道に入ると、ひやりとした冷気に包まれた。
俺(戻ったら、タナ子と話がしたいな)
タナ子。俺の組み立てた道が正しいのならば、きっと。
俺(あいつは……ん?)
ドッ!何か塞き止められていたものが解放されたような音がした。空気が震えている。
俺「ッ!?」
ザァアァッ!!目の前には勢い良く流れ来る大量の水。俺を飲み込むかのように捕えた。
俺の声は単語にならず、ただただ音を出し空気の泡を生む。まずい。通路いっぱいに水がある為、酸素を吸う事ができない。落ち着け、落ち着け。
ぐっ。と口を閉じて泳ぐ。真っ直ぐ泳ぐ。苦しいと気付いたらそこで泳げなくなる。気付かないフリをして泳ぐ。
進み続けると、行き止まり。だが、壁に古びたボタンがあった。この際何でも良い。状況が変わるはずだと信じてボタンを押した。
ザァアァー。水が引いていく。良かった。この道はハズレだったようだが、命があれば何度でもやり直しはきく。
俺「うっ!げほっ、ゴホ……ゴプッ」
飲み込んだ水を吐き出した。つもりだった。
俺「まさ、か……」
赤い、ドロリとした液体が抑え切れなくなった手からポタリと落ちた。あれは、ただの水じゃなかったのか。
タナ子『前とちがう……。どうして、だって、あの時は、一緒にっ』
グラリ。と、視界が揺れる。
立っていられず壁に背を預けた。
タナ子『次は、……しない。ごめ……い……必ず、……を、助……』
薄れゆく意識の中で、最後に聞いたのは、タナ子の。
BAD END
―ED12 ごめんなさい―