13週目/探偵局ルートまでスキップ/タナ子 ED 1


13週目/探偵局ルートまでスキップ

>>まずは適性検査だな

この女の子は俺の下僕となりうる逸材か、確認しなければならない。

俺「まずは適正検査だな」

女の子に一枚の紙を渡す。

俺「その問を解いてみろ」
女の子「はい」

ある女性が飼っていた猫がある日居なくなってしまった。
その猫はどこへ行ったのか?
1、部屋の中に居た。
2、誘拐された。
3、元から猫などいなかった。

女の子「…………」

さぁ。どう答える?

女の子「答えは、これだけですか?」
俺「――!?」

この子は、できるぞ。
そう。俺達に必要なのは多角的な視点。そして疑うことだ。

俺「合格だ」
女の子「えっ?……あの?」

がしっ。と女の子の肩を掴む。

俺「今日から俺の下僕(じょしゅ)だ!」

下僕と書いて助手と読む。
俺には下僕が必要だったのだ。俺の頭脳に優るとも劣らない、下僕が。

俺「月ヶ丘探偵局へようこそ!」
女の子「はっ、はい?」
俺「お前のコードネームは……そうだな」

この女の子元は本棚だったはずだし、これしか無いな。

俺「タナ子だ!」
タナ子「はい……?」

よし。これは早速他のメンバーに連絡しなければならない な。

1 連絡するか
2 いや、明日にするか

>>いや、明日にするか

一刻も早く知らせたい気もするが、この胸の高鳴り。こいつには勝てない。俺の下僕となった女の子が現場でどういう働きをするのか今すぐ知りたくてしょうがない。
ピピッ。タイミングを見計らったかのようにPCから電子音が鳴る。月ヶ丘探偵局宛てのメールだ。

俺「飼い猫が居なくなったぁ?」

なんとタイムリーな依頼だろう。しかしこれは先程のテストを実践できる良いチャンスでは無いだろうか。

俺「早速だが、お前には今から居なくなった飼い猫を探してもらいたい」
タナ子「わかりました」

よし。よく言った。我が月ヶ丘探偵局の依頼遂行率は100パーセントだ。わかりました、と言った以上泣いても喚いても依頼を遂行してもらうぞ。メールで依頼主とやり取りを交わし、幾つかの情報を手に入れた。
猫は黒猫である。
名前は福造。
白い首輪をしている。

俺「だ、そうだ」
タナ子「依頼主さんは、いつもお家に居るのですか?」
俺「いや。今日は仕事が休みだそうだ」
タナ子「そうですか……」

ねこさんを探しに行きましょう。そう言ってタナ子は足取り軽く部屋を出て行った。

俺「外に出たは良いが、お前どこに行くつもりだ?」
タナ子「それはですね……」

1 依頼主さんの所です
2 公園です

>>公園です

楽しそうに向かった先はタナ子が言ったように公園だった。
タナ子と同い年位の子供達が思い思いに遊んでいる。

タナ子「あの、この辺で黒いねこさん、見なかったですか?」

ぱたり。と遊ぶのをやめて子供達がタナ子を見る。そしてすぐに子供達はお互いの顔を見合わせると、ふるふると首を振った。

タナ子「見てないですか……」

しーらない。そう言って子供達は散っていった。タナ子は公園の中をただ、じっ。と見ている。

俺(ペット探しは日によって難易度が変わるからな……)

近所に居る事や家に戻っているケースもあれば、隣町まで行っている事もある。人と違い容姿の区別も付きにくいし、言葉が喋れない点非常に難しい。だが。

俺(だからこそ、どう解決する?)

公園を見ていたタナ子の顔が、はっとする。何か解ったのだろうか。

俺「あっ!おいっ」

長い黒髪が舞う。いきなり走りだしたタナ子の後を慌てて追い掛ける。公園の奥に連なる森林に足を踏み入れると、タナ子の後ろ姿が見えた。その先にも、影が一つ。

タナ子「だいじょうぶですか?」

そう声をかけている相手は。

1 猫だった
2 子供だった

>>猫だった

木の幹に、ドーン。と持たれかかる黒い猫。その首輪は白い。もしかして。

俺「福造、か?」
猫「ぶにゃあーご」

そうだ。と言うかのように猫が鳴く。よく見てみると、首輪にFUKUZOUと書かれていた。どうやらターゲットで間違い無いようだ。
なでなで。タナ子が福造を撫でる。と、また鳴いた。

タナ子「そうなのですか?」
福造「にゃーお」
タナ子「もっとばれないようにしないと」
福造「にゃーご。うにゃあ」
タナ子「飼い主さんが心配しちゃいますから、ね?」

くるり。タナ子が福造を抱えて振り返る。その顔は嬉しそうに笑っていた。

タナ子「見つけましたよ」
俺「ああ。だが、安心するのはまだ早い」

依頼主の所まで送り届ける。そこまでが依頼だ。とは言ったものの、何事もなく無事に依頼主の所へ福造を返す事ができた。
家への帰り道。俺はどうしても解せない所が合った。なぜあの場所に福造が居ると解ったのか。タナ子の走りには迷いが無かった。ただの勘にしては出来過ぎている。

俺「どうして解ったんだ?福造の居場所が」

きょとん。と言う顔をするタナ子。少し間を置いてから、ふふっ。と笑った。

タナ子「教えてくれましたから」

さも当然。と言った感じで言うが、誰がいつタナ子に福造の居場所を教えたというのか。唯一聞いた子供達は、知らない。と言ったというのに。

タナ子「わたしは、公園に居るみんなに聞いたのです。声が聞こえませんでしたか?」

ますます訳が解らない。いや、落ち着け。思い返すんだ。最初から。
いつも通りの公園。遊ぶ子供達。木々の騒めく音。それに混じる鳥の鳴き声。子供達の声。走り出すタナ子。探していた猫。猫に話かけるタナ子。

俺(鳥の、鳴き声?)

いつも聞こえる音だから特に意識していなかったが、そう言えばタナ子が走り出す直前に鳥の鳴き声がしていた気がする。それに加えてタナ子はまるで猫と会話をしていたようじゃなかったか?
会話していたよう。ではなく会話していた。だとする。タナ子の、みんなに聞いた。が、公園にいる生物全てに聞いた、だとするならば。

俺「お前は、人間以外の言葉がわかるのか?」
タナ子「わたしに伝えたいという意志があるのなら、ですけれど」

これは、類い稀な能力ではないだろうか。

1 福造はなんて言ってたんだ?
2 これは今後が楽しみだな

>>福造はなんて言ってたんだ?

タナ子「それはですね、福造さんの失踪の元にもなっているのですが」

そう言ってタナ子が少し頬を桃色に染める。何だ。何なんだ一体。
ちょい。と服の裾を引っ張られ、体を屈める。内緒話でもするかのように俺の耳に小さな手をあてた。

タナ子「お嫁さんがいるそうです」
俺「は?」

あの公園には福造の恋人がいるらしい。どうやら福造は、依頼主が仕事に行っている間に家を抜け出して公園に通っていたようだ。今日もいつも通り抜け出したのだが、依頼主の仕事が急に休みになった為この事件が起こってしまった。との事だった。

タナ子「誰しも身近な人ですら知らない一面を持つものです。でも、隠さなきゃいけない事は隠さなきゃだめなのです」

自分が知っている一面も、知らない一面も。
ざぁ。風が吹いてタナ子の黒髪がさらさらと揺れた。
隠す。隠す、隠す。

タナ子「隠し続ければいつかはそれが真実になります」

ああ。そうだ。そうして俺は生きている。

俺「……え?」

俺は今、何を納得した?

タナ子「疑問に思う心は脅かす。でも、大事な事です」

この話をした時。俺の心が酷く騒ついた。けれど、次の日になればそんな事も薄れ、それなりに楽しい毎日を送っている。
毎日を送り、タナ子が月ヶ丘探偵局のメンバーに加わってから三ヶ月が経った。
すっかり馴染んだタナ子は他のメンバーとも相性はばっちりで、どんどん来る依頼を解決している。

俺「今日の依頼は失踪事件だ。だがいつものように犬猫じゃない」
タナ子「依頼主さんはお兄ちゃん。妹さんが行方知れずだそうです」
鞠華「あら〜。これ、警察も投げている事件ですわ」
柚葉「ウチに来るなんて、手段選ばずって感じだね」
優都「久しぶりに大クエストって感じぃ?おねーちゃんとしてぇ、兄貴としては解決したい事件だな」

月ヶ丘探偵局。
頭脳型の俺。
万能型のタナ子。
武術型の柚葉。
情報型の鞠華さん。
演技型の優都。
今日も依頼を解決する為に俺は、俺達は奔走する。

俺「タナ子、何か掴めたか?」
タナ子「ばっちりです」

タナ子が笑う。この依頼も解決できる。俺は。

Thanako END
―ED1 隠して斯くして生きている―


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