1週目/タナ子下僕ルート/BAD ED 3
〜二冊目〜
ちっ、ちちち。ちちち、ちちっ。
鳥の囀りが聞こえる。
俺(朝、か……)
ちちちっ。
ぼんやりとだが、少しずつ頭が覚醒していく。
ちちっ、ちち、はぁ、ちちちっちっ。
俺(……?)
一瞬の苦しそうな呼吸音の後にまた鳥の囀り。いや、これは人の声だ。
正確には人と言っていいのかわからないが、昨日我が家の一員となった本棚の――タナ子の声だった。
俺(…………)
うっすらと、ばれない程度に瞳を開けると、タナ子が一生懸命鳴いていた。顔が真っ赤だ。
俺は思わず……。
1 もう少し寝た振りを決め込んだ
2 おはよう、と頭を撫でた
3 二度寝した
>>もう少し寝た振りを決め込んだ
あまりにも必死すぎて可愛かったので、もう少し寝た振りをしてタナ子を観察することにした。
タナ子「ちっ、ちちぃ、ちぃ、はぁ、は、ん、ちぃ、ちちち」
顔を真っ赤にさせてずーっと鳥の囀りの真似をしている。
どうしてここまで必死なのか。
俺のベットにちょん、と座って俺に向かって言っているということは、その……。
タナ子「朝のお目覚めは、鳥の、はぁ、鳴き声で、爽やか、にぃ……ぐすっ」
俺(やっぱり俺の為か……)
タナ子の瞳に、じわぁ、と透明な水が溜まっていく。
俺が目を覚まさないからか?
俺「タナ子」
タナ子「っ!」
タナ子を抱き寄せて、おはよう、と耳元で囁く。と、一瞬体が硬直した後、タナ子は忙しなくばたばたと両手を動かした。
タナ子「あのっ、えっと、そのっ、あっ、おはようございます」
俺「ん。ありがとな。あー、なんだか爽やかな気分だよ」
タナ子「……!よかった、です」
ほわぁ、と笑うタナ子の頭をわしゃわしゃと撫でた。
さて。今日は何をするか……。
1 タナ子と出かける
2 一人で出かける
3 カーチャンに親孝行
>>カーチャンに親孝行
せっかくだしカーチャンに親孝行をすることにした。
俺の部屋から出てリビングに行くと、カーチャンは台所に居た。
鼻歌混じりで洗い物をしている。
俺「カーチャン」
美琴「俺ちゃん!あら、タナちゃんも」
タナ子「あの、おはようございます」
美琴「おはよう。……んもぅ、俺ちゃん?かーちゃんじゃないでしょう?」
俺とタナ子の姿を見るなり一瞬顔を輝かせたものの、呼び方がお気に召さなかった様でカーチャンはぷんぷん、と怒ると言うか、その、拗ねた。
美琴「俺ちゃんったら、最近はカーチャンなんだもの。ちょっと前まではお母さま、みこちゃん、なんて呼んでくれてたのに」
カーチャンは、つん、と唇を尖らせた。
俺はしょうがなく……。
1 みこちゃん、と呼んだ
2 話題を反らすように洗い物を変わった
3 タナ子を見た
>>みこちゃん、と呼んだ
俺「……みこちゃん」
俺がカーチャンをそう呼んでいたのは、確か小学生の頃までだ。なんだか照れくさい。
美琴「っ、俺ちゃぁんっ!」
カーチャンはくりくりの瞳をうるうるさせるや否や、手早く手に付いている泡を落として手を拭くと俺を抱き締めた。こういう所はやはり主婦だ。
俺「カーチャン、苦しいって」
美琴「うふふ。だぁって、俺ちゃんがみこちゃんって呼んでくれたんだもの」
嬉しくないはずが無いでしょう?
そう言ってカーチャンはぎゅぎゅうっと俺を抱き締める。正直そろそろ離れてほしい。
その、胸とか、胸とか、胸とかがあたってて柔らかいというか、女性特有の柔らかさと温かさというか、いや、相手はカーチャンだ。落ち着け。カーチャンだからな。
別に何かあるわけじゃないぞ。カーチャンだからな。見た目は若いけど、二児のカーチャンだ。それに実年齢は――。
美琴「さぁ、朝ご飯にしましょうか?」
カーチャンはうふふ、ともう一度笑うと俺から離れた。少し、寂しい感じがした。
いや、マザコンではないぞ。
タナ子「…………」
俺「……?」
タナ子は微かに眉根を寄せて、口元に片手をあてている。
どうしたのだろうか?
1 タナ子に声をかける
2 カーチャンと朝食の準備をする
3 二度寝する
>>タナ子に声をかける
俺「どうした?」
タナ子の眉間を小突くと、びくっと跳ねる。そして視線が忙しなく彷徨い、落ち着た。かと思うと、やはりまた眉根を微かに寄せる。
一体どうしたというのか。
タナ子「…………」
きゅきゅうっ。タナ子は俺に抱きついてきた。
俺「タナ子……?」
これにはオレも少し困惑してしまう。
カーチャンとばっかり話してたから寂しかったのか?
タナ子「どうして……」
ぽつりと、タナ子が零した言葉は悲しみの音で。
タナ子「どうして、喜んでくれないですか?」
タナ子の顔は、見えない。
タナ子「先程は、喜んでました」
先程。カーチャンのことか?
朝の囀りといい、今の抱きつきといい、もしかしてタナ子は。
俺(俺に喜んでもらいたいのか?)
1 さすが、俺の下僕だな
2 馬鹿だなぁ、タナ子は
3 タナ子の頭を撫でた
>>さすが、俺の下僕だな
さすが、俺の下僕だな。
俺を喜ばせよう。その心意気は買ってやれる。だが。
俺「そんな事で俺が満足できると思ってるのか?」
自分でも少し驚くくらい冷たい声だった。
タナ子の顔がゆっくりと俺に向けられる。恐々する必要がどこにある?
お前は俺の下僕だ。それ以上でもそれ以下でもない。俺にただ従えば良い。そうだろう?
タナ子「っ!やぁっ!?」
心の中にドス黒いものが広がる。
俺は何をしているのだろう。タナ子を組み伏せて。
この衝動は、一体。
1 ダメだ。抑えられない
2 ダメだ。落ち着け
>>ダメだ。抑えられない
一瞬。こんな事は良くないと冷静な自分が叫んだが、それは抗い難い衝動によって掻き消された。
タナ子「ひぁっ!?」
白い喉元に唇を這わせると、ひゅっ、とタナ子が息を呑んだのがわかった。
かたかたと震える手は俺の胸を押し返そうとしているのか、添えているのかわからない。
タナ子「いやぁ、いやですっ、やめて、くだ、さあぁっ!んっ…ふ…ぁ」
喉元から耳へと舌を滑らせる。耳たぶを甘噛みすると、タナ子から甘ったるい声が上がった。もっと聞きたい、と耳の中に舌を差し入れる。
くちゅり。ぐちっ、ちゅ、くちゅ。
水音が辺りに響く。
俺の与える刺激にタナ子がびくびくと体を震わせる。ぞくり。快感が俺の背筋を駆け抜けた。
もう、止まらない。
二人分の荒い息遣い。
タナ子がぼろぼろと快感からか、はたまた悲しみからかわからない涙を零す。
それでも、俺は冷静になれなかった。
タナ子「いやと、言いいましたのに」
痛みが襲うまでは。
俺「うぐっ!?」
タナ子「信じて、いましたのに」
ばきり。ばきっ。ぐきっ。
俺の体が有り得ない方向へ曲がり、四角く折り畳まれていく。
グチュ。体の中の臓器が潰れる。込み上げてきたものを吐いた。
真っ赤なそれは、タナ子を深紅に染め上げた。
タナ子「本は、本棚へ戻しましょう?」
ああ、そうか。薄れゆく意識の中、抗い難かった衝動の名前を思い出す。
俺は本能的に悟っていたのかもしれない。この、衝動は。
死への欲求。
そうか、お前は。
俺「タナト――」
最期に見たのは、喜びか、悲しみか。
BAD END
―ED3 死への誘い―