番外編/ゆーとさんとげぼくたち


>>EP ゆーとさんとげぼくたち

優都「次はどうしようかしらん?」

パラリ。と優都は台本を捲る。
劇団、優都と下僕達の腰掛け。の団長優都は、次の演目を決めかねていた。

優都「悩んでたってしょうがないよねっ!あみだくじで決めようかなっ」

1 白雪姫
2 赤頭巾
3 シンデレラ

>>白雪姫

優都「はーい。白雪姫に決定みたいな?さてと、白雪姫の配役はぁ」

1 俺きゅん!
2 ユウだよねん!
3 他にいるー?(ちゃんと姿が登場済みキャラのみ指定可能)

>>俺きゅん!

優都「やっぱりかわいい俺きゅんしかいないよねっ。次はぁ、ババアって言うか王妃様?」

1 鞠華さんしかいないよねっ
2 ユウいっちゃう?
3 キャラ指定

>>鞠華さんしかいないよねっ

優都「きゃはっ!おもしろくなってきたかもっ。次々ー!王子様はぁ」

1 もっちろんユウだよね!
2 ゆずちゃんかなぁ?
3 キャラ指定

>>もっちろんユウだよね!

優都「ユウに決まってるよねっ!あとぉ、やっぱりオリジナリティーって大事だよね!林檎はぁ」

1 たぁちゃんでいってみちゃう?
2 果物の林檎
3 キャラ指定

>>イザナミさん?

優都「イザたんに決定ー!これで準備ばっちりみたいなぁ?」

優都は一冊の古ぼけた厚い本にタイトルと配役を書くと、パタン。と閉じた。

優都「はーい!みんな集合ー!」

俺は集合の合図に嫌な予感がしながらもリビングに行くと、優都とその他の面々が集まっていた。

俺「げっ。優都、お前またそれ使うのかよ」

優都の手の中にある本。
優都いわく、シナバギトオと言う本だった。タイトルと配役を書き、書いた人間が呪文を唱えると本の世界に取り込まれ、お芝居をしてストーリーを終わらせなければ本の世界から出られない。という、傍迷惑なアイテムである。
取り込まれる本人の意志は総無視だ。

優都「今回もお芝居をしたいと思いますぅ!」

ドンッ。テーブルに古ぼけた本を置くと、優都はパラパラと捲る。

優都「えーっと、ああ、あったあった!今回の配役を紹介しまーす」

俺、白雪姫。
鞠華さん、王妃兼物売りの老婆。
優都、隣国の王子。
タナ子、毒林檎。
イザナミさん、小人。
その他諸々。

俺「いや、俺が白雪姫とかおかしいだろ」
鞠華「王妃はともかく、わたくしが老婆ですの?」
優都「俺きゅんはユウが救ってあげるからねんっ」
タナ子「俺にいに食べられちゃうですか……」

思い思いに感想と言うか文句と言うかを述べるが、やはり優都はお構いなしだ。

俺「あー、面倒な事になりそう」

優都が唱える呪文を遠くなりつつある意識の中で聞いていた。

優都『俺雪姫のはじまりっ、はじまりー!』

優都のタイトルコールに目を覚ますと、そこはお城の中だった。

1 鏡を見る
2 庭に出る

>>鏡を見る

俺「うっわキモっ」

そこには豪華なドレスに身を包んだ俺が映っていた。
幸いな事に、前回のシンデレラの時のように巨乳だったり髪が長くなったり等はしていない。が、余計に俺が浮き彫りになっているからか気色悪い事この上無い。
うなだれていると、隣の部屋からぶつぶつと何かを喋っている声が聞こえた。そっと扉を開けてみる。

鞠華「わたくしが老婆だなんて、喧嘩を売っているとしか思えませんわ!」
美琴「鞠ちゃんは綺麗だものねぇ」
鞠華「えっ、あ、美琴さまがそうおっしゃってくださるのなら……」
美琴「でも、やっぱり俺ちゃんには叶わな」

ピシィッ。パァン!
カーチャンの手中にある手鏡が割れた。

鞠華「クスッ。今、わたくし、例え俺くんでも美しさで私を超えることは許さなくってよ?」

鞠華さんが妖しく笑う。大丈夫、大丈夫ですよ。鞠華さんは美しいですから!
俺の心の中の必死な訴えも虚しく、鞠華さんは猟師に俺を殺すよう命じたらしい。

俺「うっわ怖ぇっ」

逃げるが勝ちだな。と思い庭先に出ると柚葉がいた。

柚葉「俺っ!」
俺「猟師ってお前かよ」

銃を携えた柚葉は銃口を俺に向けると、撃ち放った。

俺「ええっ!?」
柚葉「何を驚いているのさ?あたしは、俺を殺せって言われてるんだから」

ドンッ。ドンッ。
銃声が青空にこだまする。

俺「いや!そこは殺そうとするが殺せなくて猪の心臓を持ち帰る所だって!」
柚葉「そうなの?」

きょとん。とする柚葉。
銃声が鳴り止んだ。

柚葉「なら、早くそう言ってよ」

こいつ、白雪姫の話知らないのかよ。
こうして俺は柚葉に白雪姫の話を教えながら森へと入って行った。

柚葉「じゃあ、俺。猪仕留めたし帰るね」

ぽーい、ドスッ。柚葉は心臓を抉り取った猪を俺に投げて寄越すと、森を出て行った。

俺「次は……確か小人の家に行けば良いんだよな」

1 おっ、早速発見!
2 ……何してんの?

>>……何してんの?

優都「てへっ」
俺「いや、てへっ、じゃねーよ」

そこにはまだまだ出番は先な筈の優都が居た。

優都「舞台監督としてはぁ、俺きゅんが気になっちゃってみたいなぁ?」
俺「あのなぁ、これ終わらせないと俺達ここから出られないんだぞ?」

ため息混じりにそう言うと、優都は、むむむ。と考えだした。
どうせロクな事ではないだろう。

優都「じゃあ、このままユウの国に直行!はどぉ?」
俺「はぁ?何考えてんだよ」

1 アホか
2 小人の家へ向かう

>>コンコン

扉からノックが聞こえる。これは次の展開的に物売りの老婆だな。

俺「はーい」

ガチャリ。バタン。
俺は扉を開けて閉めた。が、すぐに開けられる。

優都「ひっどぉーい!」

俺「酷いじゃねぇよ!だからお前何してんだよ!」
優都「マニュアル通りにやりたがる俺きゅんだからぁ、物売りのババアの振りすれば出てくれるかなっ!てぇ」
俺「帰れ」

バタン。優都を追い出してはみたものの、物売り役の鞠華さんはなかなか来ない。

俺「どうするか、ってえええ!?」

パリィン。家の窓が割れて人影が転がり込んできた。

?「あら〜?おかしいですわね」
俺「鞠華さんどこから入ってきてるんですか!」
鞠華「俺くん。ちょうど良かったですわ」

そう言うと鞠華さんは長いものと刺々したものを取り出した。いや、まぁ、その、大まかに分ければ合っているがまさか。

鞠華「腰紐と櫛がありませんでしたの。これで我慢なさってくださいますか?」

ギュッ。グサッ。
俺の首にヌメリとした感触。次いで頭に走る激痛。

俺「ちょ!それタコの足とウニじゃないですか!」
鞠華「近いものがこれしかなかったんですの」
俺「いや、ちょっとマジ勘弁っ」
イザナミ「俺様!」

仕事から帰ってきたらしいイザナミさんがナイフを投げる。
ヒュパ。と、首にまとわりついていたタコの足が切れた。

鞠華「邪魔が入りましたわね」

そう言うと鞠華さんは家を出ていった。

イザナミ「俺様、今日の晩ご飯の支度は?」

あっ。優都が来たりしたものだからすっかり忘れていた。
俺は床に散らばった無残な生物達を見る。

俺「えー、今日の晩ご飯はお刺身です」

まったく。こんなんじゃ完成まで程遠いいな。

1 勝手に林檎食べちゃうか
2 コンコン

>>ぎゅうぅっ

ふっ。と、体が浮くような感覚がして目が覚めた。
正確には辺りに光は無く、真っ暗な為目が開いているのか閉じているのか判断がつかない。
けれど、感覚的には目を開けている。気がする。

俺(……なんだ?)

暗闇かつ自由に体が動かせない事から圧迫感と息苦しさを覚えるが、何かが乗っかっている様な気もする。一体何が。
得体の知れないものと言うのは例え危害を加えないとしても、それだけで恐怖心を増幅させてくれる。

?「んゅ」

もぞ。俺の上で何かが寝返りを打った。と言うことは生き物か。四肢のようなものが確認できたとなると人なのか。
だが、今俺と密着しなければならない人など居たかと考えを巡らせる。
ガタン。
思考を断ち切るかのように世界が揺れた。微かに明かりが射し込む。蓋がずれたようだ。
そうか、俺は棺の中に入っていたのか。

優都「麗しの俺きゅん!今、ユウが助けてあげるからねっ」
イザナミ「お待ちください。口付けという説もありますが他にも方法はございます」

うげ。まさか優都、俺に口付けする気かよ。冗談じゃない。

1 べりっ
2 動けない、だとっ!?

>>動けない、だとっ!?

止めろ、止めてくれ頼む。誰が好き好んで兄貴と口付けなんかしなきゃならないんだ。止めろ。
俺のそんな思いとは裏腹に身体は動かない。ガラリ。蓋が外されて眩しいくらいの光が射し込んでくる。

優都「俺きゅ」

ゴンッ。

優都「あぐっ」
?「きゃうっ」

俺の体にあった重みが無くなる。
自由が利く身体を起こしてみると、頭を両手で抑えて涙目になっているタナ子と、顎を抑えて悶えている優都がいた。
そうか、毒林檎役だからタナ子は俺とずっと一緒に居たのか。

俺「うっ!」

また鼻に熱が集まってきたような気がする。

俺「おいっ、優都もう完結にしろ!」
優都「えぇっ?まだ結婚式上げてバ、鞠華さんにあっつうい靴履かせて悔しがらせてないもん。やだぁ」

くそっ。このままだと俺はまたタナ子でやましい妄想をして鼻血を出すという失態をおかしてしまう。それは避けたい。

俺「わかった。後で一緒に買い物行ってやるから!」

ちらり。優都はこちらを一瞬見たものの、すぐにそっぽを向いた。
畜生。足元見やがって。

俺「それに、プリクラも撮ってやるぞ!」

優都の瞳が見開く。

優都「それ乗った!」
俺「よしっ」

思わずガッツポーズしてしまう。

優都『俺雪姫、おしまいっ、おしまいー』

ぽんっ。
気が付いたらシナバギトオを取り囲む形で俺達はリビングに戻ってきていた。
こいつが優都の手の中にある限り、俺達はまた優都の遊びに付き合わされるのだろう。退屈はしないだろうけど大変だなぁと、俺は思うのだった。

―END―


第4回BLove小説・漫画コンテスト応募作品募集中!
テーマ「推しとの恋」
- ナノ -