6週目/最初から/BAD ED 16
>>どうしたんだよ?
優都「お前には、わからないよ」
俺「……なんだよ、それ」
優都は覚束ない足取りでリビングを出て行った。
ガチャン。重い音がした。
タナ子「俺にい?」
ひょこり。と、タナ子がリビングから顔を出した。
とてとて、と遠慮がちに俺の所へ寄ってくる。
タナ子「ユウおねーちゃんと喧嘩したですか?」
だめですよ。と、タナ子が言う。
タナ子「ユウおねーちゃんは、俺にいのことが一番すきなんですから」
ね?と、タナ子が笑う。
タナ子「優都がだめならユウなら良いかなって、言ってました」
かわいそうです。と、タナ子は瞳を伏せる。
俺「わっかんねーよ」
優都が何を考えているのかなんて。いっつもふざけてばっかりで。
タナ子「聞いたら良いですよ、わからないことは」
俺「……そう、だよな」
タナ子「わたしのすきなゆーとなら、ちゃんと教えてくれるはずです」
俺「え?あっ、ああ」
タナ子に促される形で俺は家を出た。
優都を探すとしても、どこを探せば良いのか。
ふと、昔の事を思い出した。そう言えば喧嘩をした時に優都は必ずと言っていい程公園のブランコに乗っていた。
俺「行ってみるか」
キィー、キコー、キィー。
街灯の頼りない灯りの中で、ブランコが揺れていた。
俺「優都……」
1 お話しようか
2 ごめん。さっきの嘘
3 俺、怖かったんだと思う
>>お話しようか
カコッ。キィー。
隣のブランコに腰を降ろした。ゆらゆらと気ままに揺れながら、夜の公園を真っ直ぐ眺める。
俺「なぁ、タナ子って、お前の事好きなの?」
今までのタナ子の行動や、発言。わたしの好きな優都、の言葉。そう考えずにはいられない。
優都「……ユウはお姉ちゃんだが、優都は違うんだって、さ」
キィー。キキィー。
やっぱり、男としてタナ子は優都の事が好きなのか。
俺「優都はタナ子の事、どうなんだよ」
キィ。
優都「本当に、馬鹿だよねぇ、俺きゅんは」
俺「優都?」
キィキィー。主を無くしたブランコが激しく揺れた。
優都「ユウが、優都が好きなのは俺きゅんに決まってるじゃん」
ぎゅっ。体がブランコの鎖の冷たさと優都の体温に包まれる。
俺「あ、あのな、俺も兄貴だし、優都のこと好きだよ?タナ子の事も妹として好きだし!」
優都「馬鹿っ……」
ぎゅ。優都の腕の力が強まる。近くなる優都の端整な顔。まさか。
俺「優――」
タナ子「ゆーと!ぬけがけは禁止です!」
がさっ、たたっ。茂みからタナ子が走ってくると、俺と優都を引き剥がそうとする。
タナ子「んゅっ!正々堂々と勝負すると言ったじゃないですかっ」
優都「ちぇーっ。たぁちゃんがユウの事好き!?破れた初恋、かわいそうな俺きゅんをユウが慰めてあ、げ、る、作戦失敗ぃー」
なっ、なんだこの状況は。
ふんぬっ。と怒るタナ子と、ふんっ。と顔を背ける優都。
タナ子「わたしのすきなゆーとはいつでも平等でした……そんなことしないはずです!」
優都「たぁちゃん?恋のライバルなんてね、所詮ライバルなのよ?いつ裏切るかなんてわからないわよん。そ、れ、に!ユウだって、そろそろ三人一緒で出かけるのとかぁ、たぁちゃんにハンデあげるのきつかったしぃ」
タナ子「俺にい協定をやぶるつもりですか!」
ちょっと待てよ。もしかしてこれはもしかしなくても。
俺「二人共、俺の事が好きなのか?」
優都「何を今更ぁ」
タナ子「わかってなかったのですかっ?」
えー、つまり。
あれか、タナ子にとってユウはお姉ちゃんだけど優都は恋のライバルと。
やたら三人一緒で出かける事が多いと思ったら、お互い抜け駆けしないようにと言うルール。
たまぁ、にタナ子と二人で出かける事があったのは優都なりの気遣い、ハンデ。
俺の知らない間に優都とタナ子にそんな関係ができていたなんて。
タナ子「それで、俺にいはどっちがすきですかっ?」
優都「もちろんユウよねん?」
俺「えーっと、俺、はだな……」
さっき優都にも言ったが、俺は優都の事を兄貴。タナ子の事を妹。として見ている。
そんな恋の感情は無い、はずだが。
俺「二人共大事な兄貴と妹ってことで!」
ダッ。俺は公園から逃げるように走り去った。
やはり優都とタナ子は追いかけてくる。
これは、あれだな。うん。
明日からは普通に兄と弟と妹としては過ごせないな。
俺はどこか寂しさと、ほんの少し生まれつつあるドキリとした感情を心に抱きながら夜道を走ったのだった。
BAD END
―ED16 妹ライアングル?―