6週目/最初から/BAD ED 16
>>おやすみ、タナ子
俺はそう言い残して部屋へと戻った。
ベットに身を沈めると、すぐに睡魔が襲ってくる。眠りにつく間際、何かが聞こえたような気がした。
優都「俺きゅーん!朝だよぉー?」
ガバッ。布団を剥がされ、ひやりとした空気が一気に纏わる。
うざったい声と寒さに、俺は多少のイライラと共に覚醒していく。正直、まだ眠っていたい気持ちもある。
優都「ほぅら、おっきして!そーれ、おっき!おっき!」
俺「……うるせ」
子供じゃないんだから。
こうして俺の朝の目覚めは最悪なものとなった。
俺「で。まだ眠ってるのか……」
俺と優都は朝食もそこそこに済ませ、タナ子の横に座って覗き込む。
すやすやと眠っているようにも見えるし、死んで眠っているようにも見えなくはない。
そっと耳をタナ子の胸にあてる。大丈夫。生きている。確かに生きている音が聞こえる。
優都「お姫サマなら、キスすれば目覚めるかもぉ!なぁんてねん」
俺「馬鹿言うなよ。お伽話じゃあるまいし」
でもまぁ、この状況はお伽話みたいなものだが。
俺「…………」
1 額をくっ付ける
2 手の甲に口付ける
3 いけっ、優都!
>>額をくっ付ける
こつり。タナ子の額に自分の額をくっつける。
じわ、と微かに体温が伝わる。熱くはない。熱は無いようだ。
ふるり。至近距離にあるタナ子の睫毛が震えた。
俺「タナ子……?」
うっすらと瞳が開かれた。
タナ子の漆黒の瞳に俺が映る。
タナ子「ぁ、ぅ……?」
きょと。とするタナ子。
ぴしり。と固まる俺。
べりっ。と優都が引き離す。
俺「あ、えっと、おはよう」
タナ子「おはよう、ございます?」
目を覚ましたタナ子は泣くわけでもなく、至って普通だった。
俺「あの、な。そのだな」
優都「お嬢ちゃんはぁ、今日から家の子だからねん!ユウはおねーちゃんで、俺きゅんはおにーちゃんだから、ねっ」
ばっちん。優都のウインクが決まる。
タナ子「おねーちゃん、に、おにー、ちゃん」
優都「そそっ!俺にい、って呼んであげなさいなっ」
ぎこちない俺の変わりに優都が今までの経緯やこれからのことをタナ子に話してくれた。
やはりと言うか何というか。タナ子は名前が無かったのでそのままタナ子と名前をつけた。そして家族に――妹として迎えると話すと、申し訳なさそうにしてはいたが、嫌ではないようだった。
俺「ありがとな、優都。助かったよ」
優都「お礼は三倍返しで良いわよん」
ウインクの置土産を残して優都はリビングを出ていった。
俺「部屋余ってないから、俺と一緒でも良いかな?」
タナ子「はい」
こくん。とタナ子が頷いたので、俺はタナ子が使っていた布団等を部屋に運んだ。
優都は自分の部屋に籠もっているのか外に行ったのかはわからないが、見当たらない。
今、俺の部屋には俺とタナ子だけだ。
俺「タナ子」
1 この間の、ことだけど
2 いや、なんでもないよ
>>いや、なんでもないよ
タナ子「?」
タナ子は、ちょん。と子首を傾げて俺を見た。
聞きたいことがあったが、今一つ踏み込むことができない。聞く勇気が俺には無かった。
俺「そうだ、タナ子。ちょっと外に出てみないか?」
今日は快晴だ。出かけるには持って来いだろう。
1 兄弟水入らずするか
2 そうだ、もしかしたら
3 まだ出かけるのは止めておくか
>>兄弟水入らずするか
俺「おーい優都ー。タナ子と出かけるけど行くー……げっ」
優都の部屋に入ると、服が散乱していた。
服と言っても普通の服では無い。リボンだのレースだのフリルだのが付いているぴらぴらとした服。本当に良くこんなのが着れるよなぁ、と思う。呆れを通り越して感心。はしないな。うん。
優都「ねぇ、俺きゅん。どっちが良いと思うぅ?」
俺「はぁ?勝手にしろよ。強いて言うなら、優都。せめてジーンズにワイシャツとかにしてくれ」
彼氏じゃあるまいし。優都の服のことを聞かれてもどうでもいいとしか思えない。
素直にそう思ったからそう言ったのだが、優都は面白くなかったのか頬を膨らませている。
優都「もぉう!せっかくだから俺きゅんにたぁちゃんのお洋服決めさせてあげようと思ったのにぃ!」
なんだと!?
優都のじゃなくてタナ子のだったのか。
俺はすぐさま優都の手に握られている二着のワンピースを見る。
俺「こっちだ!」
1 黒いワンピース
2 白いワンピース
3 赤いワンピース
>>赤いワンピース
俺は優都の足元に落ちている赤いワンピースを奪うかの如く掴んだ。
くあっ。俺の俊敏な動きに対してか、優都の瞳が大きくなる。やらん。このワンピースはやらんぞ。優都のだけど。
俺「赤だ!」
優都「まさかそれ選ぶなんて、ユウびっくりって感じぃ……」
どうやら優都は俺の俊敏かつ華麗な動きではなく、赤いワンピースを選んだことに対して驚いていたようだった。
優都「ユウもそれが良いなぁって思ってたんだよねぇ」
そう言うが、でもこの赤いワンピースは候補に無かったよな。足元に落ちていたわけだし。
現に今も優都の手には黒と白のワンピースが握られている。
優都「でも残念。たぁちゃんは赤も似合うと思うんだけどぉ、お肌が白いから黒のワンピースかなぁ」
そう言って優都は白いワンピースをベットの上に置いた。いや、クローゼットの中にしまえよ。だから部屋汚いんだろうが。
優都「この黒のワンピースはぁ、真ん中のリボンとぉ、サイドの編み上げがかわいいんだよねぇっ!後ろにもちゃあんとリボン付いてるしぃ」
でも、赤でも良かったかなぁ。俺きゅんとも同じ考えだったみたいだしぃ。
優都はそう呟いた。どことなく嬉しそうな感じがしたが、こんな事で嬉しくなったりなんかしないか。
俺「おぉー。役に立つではないか、優都よ」
優都「きゃはっ!俺きゅんに褒められちゃったぁ」
俺「今回ばかりは、な」
タナ子「……え、と」
優都によってタナ子は黒のワンピースに着替え、長い黒髪にも可愛らしい飾りが付いている。
なんだか落ち着かなさそうにそわそわしているタナ子がまた可愛らしい。
妹、万歳。
俺「大丈夫だよ、タナ子。かわいいよ」
タナ子「そう、ですか?」
俺「ああ。頭に付いてる」
1 小さな帽子も似合ってるよ
2 リボンのカチューシャも似合ってるよ
3 ヘッドドレス、だっけか?も似合ってるよ
>>イルカと握手会
愛嬌たっぷりのハンドウイルカとイルカタッチができると言う内容のチラシだった。
ちら。とタナ子を見ると、きゅっ、と口を引き結びうずうずしている。よし。決定だな。
俺「タナ子、イルカと握手しに行くか」
タナ子 「はいっ」
ぎゅうっ。繋いでいる手に一層力が籠もる。楽しみみたいだ。
優都「ユウも握手しちゃうもんねっ」
俺「はいはい勝手にしろよ。ほら、タナ子。イルカだぞ」
イルカ「きゅーい、きゅーい」
タナ子「わあっ……」
プールサイドにまで来ているイルカは可愛らしい鳴き声で招いている。
係員の元、イルカと握手する。
タナ子「っ!ごむごむしてます!」
イルカの肌ざわりはゴムのような感触だった。
ばしゃばしゃ。水飛沫がかかる。
イルカ「きゅい!きゅーい!」
タナ子「わわっ」
水がかかったタナ子はぎゅっと目を瞑っている。
ハンカチで顔を拭いてやると、んぅ。と鳴いた。
イルカも可愛いが、やっぱりタナ子が可愛いな。
係員「?どうした、エイコ?」
イルカ「きゅきゅーい!」
俺「えっ」
ぐらり。
1 うわああっ!
2 待っ!
3 あっ。
>>待っ!
タナ子「きゃうぅっ!」
バシャーン!イルカによってタナ子がプールの中へと攫われる。
俺「タナ子ぉぉっ!!」
優都「おい係員何してんだゴラァ!!」
係員「ひぃぃぃっ!?エイコは穏やかな子でして、普段から気性も荒くなく、それはそれはもう天使のように愛らしく」
優都「お前の天使なんかどーでもいいんだよ!ユウ達の天使がだなぁ!!」
イルカ「きゅーい!きゅー!」
タナ子「ふふっ。すごいですー!」
ぱしゃーん。
タナ子の明るい声に係員からプールの方へと視線を移すと、イルカとタナ子が笑い合っていた。イルカの背に跨るタナ子は笑顔に包まれている。
俺「タナ子……」
優都「上の人間早く呼べよカス!」
係員「ひぃっ、あの、それだけはぁ」
とりあえずタナ子は大丈夫そうだな。
それよりもこっちの怒り狂ってる優都の方が大変そうだ。
俺「タナ子大丈夫みたいたぞ、優都。それより替えの服ある?」
優都「キャリーの中に入ってるに決まってんだ――え?たぁちゃん無事なのぉ?」
きゃるん。
どうやら落ち着いてくれたみたいだ。係員の人は顔面蒼白だが。
優都「ユウったらちょっとびっくりしちゃってぇ、ご、め、ん、ね?」
係員「……ひ、ひえ」
イルカは大人しくプールサイドまで泳いでくると、タナ子を下ろしてくれた。
きゅい!きゅい!と嬉しそうに鳴き笑う顔が憎らしい思いもあるが。
タナ子「イルカさん、ありがとう、ございます」
それ以上にタナ子が喜んでいるみたいだし良いか。
タナ子はイルカを撫でると、ごむごむー。と言ってまた笑った。
俺「ただいまー、っと」
家に帰りリビングのソファーに腰を埋める。
アクシデントがあったとは言え、楽しい時間を過ごせたと思う。
ちら。とタナ子を見ると、表情も心なしか明るい気もする。
1 そう言えば冷蔵庫に
2 そうだ、布団にあれを
3 疲れたし寝るか
4 ん?このリボン
>>ん?このリボン
ごそっ。何となくポケットに手を突っ込み引っ張りだした赤と黒の格子柄のリボン。
俺「これ……優都のだよな」
そう言えば水族館であいつが落として、そのままだったな。返しに行くか。
コンコン。
俺「優都ー」
優都「あっ、ちょっと待って!今ユウはお着替え中なのぉ」
別に着替えてても構わないだろうが。とも思うが、別に優都の着替えを見たいとも思わないし大人しく待つことにした。
カチャリ。暫らくしてから扉が開く。
これまたフリフリした赤いパジャマを着た優都が現れた。
優都「なぁにぃー?まさか夜這いぃ?」
俺「誰がするか。……じゃなくて、これ。優都のだろう?」
ずいっ。リボンを優都の前に差し出す。
優都「あーっ!これユウ探してたんだよぉ!もぉ、リボン欲しいんなら言ってくれれば良いのにぃ」
俺「ちげーよ!優都が水族館で落としたんだろうが」
優都「……わざわざ拾ってくれたの?」
普通そうだろうが。
優都は素直にありがとう、と言うとリボンを受け取った。
優都「ユウのリボン欲しくなったらいつでも言ってねん」
俺「いらん」
まったく。優都と話すと話がややこしくなるんだよな。
1 そう言えば冷蔵庫に
2 そうだ、布団にあれを
3 疲れたし寝るか
4 占ってもらうか