5週目/最初から/鞠華 ED 11


本棚を組み立てたはずが女の子ができあがった。

「いや、意味わからん」

組み立てていたのは何の変哲もないホームセンターで買ったスライド式本棚だったはずだ。

「取り敢えず……」

1 話しかけてみる
2 不気味だし無視で
3 カーチャンを呼ぶ

>>カーチャンを呼ぶ

この状況は理解できない。
ここはちょっとカーチャンを呼ぶか。
俺は部屋を出てリビングの方へ声を投げた。

俺「カーチャン!ちょっと来てくれ」
美琴「んもぅ。カーチャンじゃないでしょう?美琴ちゃんっ」

そう言いながらもカーチャンは俺の所へ来てくれた。
さすがにいきなり女の子を見せるわけにはいかないからな。

美琴「それで、どうしたの?俺ちゃん」
俺「その……」

俺は本棚を組み立てたはずが、女の子ができあがったことを伝えた。
すると、やはりと言うか、なんと言うか。カーチャンは怪訝そうな顔をしている。
ここはやっぱり見せないと駄目か。

俺「じゃあ、まぁ、見てよ」

部屋に入ると、カーチャンはちょっと戸惑ったようだった。そりゃそうだよな。俺もそうだったし。

美琴「あの、ね。俺ちゃんもお年頃だから、しょうがないと思うわよ」

ん?なんだ?
カーチャン、勘違いしてないか?

美琴「だから、止めたりしないわよ」

安心して。と笑うカーチャン。
いや、待ってくれ。違うんだって。

美琴「零都(レイト)さんもいないから、そう言う相談もできないのかもしれないけど……」

零都――どこをほっつき歩いてるのかわからない俺のオヤジだ。
だから、そう言う相談は優都とか友達としてたな。ってそうじゃなくて。

美琴「言ってくれれば聞くわよ、俺ちゃん」

待て待て待て。待って。
本当に違うんだよカーチャン。これはいかがわしいモノじゃないんだって。
しかし無情にも、カーチャンは微笑みを残して俺の部屋を出ていった。

俺「……最悪だ」

1 カーチャンに弁解する
2 こうなったら自棄だ
3 気分を変えよう

>>カーチャンに弁解する

このままここで過ごすなんて居たたまれない。居たたまれなさすぎる。
これから俺を見る目が哀れみか蔑む目だったらまだ良い。でもカーチャンはそんなことをしない。きっといつも通りだろう。
逆にそれはそれで辛い。ここはなんとしても弁解しなければならない。

俺「カーチャンっ!」
美琴「あらあら。もしかしてもう相談?零都さんともお話してないし心の準備が……」
俺「違うって!だから」

俺は再度説明したが、カーチャンは困惑している。
まぁ、その、あたり前だろうけど。

美琴「わかったわ。俺ちゃん、今は明るいから、後で、ね?」
俺「違うんだってカーチャン!!」

敗北した。
しかも夜の約束付きって俺もう死にたいんだけど。
部屋に戻って女の子を見る。
触ったらやっぱり本棚みたいに木の感触なのか。材料が木だからいくら見た目が人間の様でも柔らかくはないだろう。
頬に恐る恐る触れてみる。

俺「噛み付いたりしない、よな」

ぱちり。

俺「うああぁうわあっ!?」

女の子の目が開いた。

女の子「おはようございます。マスター」

しかも喋った。

女の子「わたしは、ヒューマノイド、タイプTです」

幼さを感じるけれど、抑揚の無い淡々とした声が告げる。

女の子「マスター、ご命令を」

1 これならカーチャンに弁解できるだろ!
2 詳しく話を聞かせてくれ
3 頭痛い、な

>>詳しく話を聞かせてくれ

いやいやいや。なんだよこれ。
本棚でもなければいかがわしいモノでもなさそうだぞ。

俺「ご命令、なんて言われてもそんなすぐに……あ」

ご命令。なんて言うくらいだから、おそらくなんでもやってくれるだろうし、なんでも喋ってくれるんじゃないだろうか。

俺「詳しく話を聞かせてくれ」
女の子「はい。マスター」

俺は女の子に今の状況、女の子自身のことについて聞いた。
女の子は先の通り、ヒューマノイド、タイプTと言うものらしい。人間ではないようだ。
そして一番最初に触れた人間をマスター――主と認識しマスターに危険が及ばないように護衛をする存在だと言った。
なぜ俺の部屋に居たのか、誰が女の子を創ったのかはわからなかった。

俺「とにかく、これって家に住むってことだよな?」
女の子「マスターのお側に控え、護るのがわたしの使命です」

と言うことはカーチャンに説明するしかないよな。でもまぁ、今度は信じてくれるだろう。

俺「カーチャン。そういう事なんだよ」
美琴「あらぁ……そうなの」

カーチャンは片手を頬にあてながらしげしげと女の子を見た。
ジッ。と見られても女の子は微動だにしない。

美琴「レイシス?」
女の子「っ!」

カーチャンが外人みたいな名前を言うと、女の子はピクリと反応した。

俺(なんだ?カーチャンは何か知っているのか?)
美琴「そう……俺ちゃんにも話す時がきたのね」

カーチャンが口を開いたその時。
ガシャンッ!!
リビングと庭を繋ぐ窓が割れた。

俺「えっ!?ちょ、何っ!?」
女の子「下がってください」

女の子が俺とカーチャンの前に立つ。

1 馬鹿!危ないだろうっ
2 何これカーチャンっ!
3 俺死ぬのっ!?

>>馬鹿!危ないだろうっ

俺「馬鹿!危ないだろうっ」

グイッ。
俺は女の子の腕を掴むと抱き抱えた。

女の子「っ!何を……っ」

暴れる女の子を押さえ込む。
俺を護るだって?冗談じゃない。
いくら人間じゃないとは言え、女の子に怪我をさせるわけにはいかない。

女の子「はなしてください!マスターを護れないっ」
美琴「だぁいじょうぶよ。映像機のお届けものみたいだから」

そう言うとカーチャンは窓ガラスの破片に混じる小型の箱を拾い上げた。
ヴゥン、と機械音がした後、人が映し出される。

俺「おっさん!?しかも立体映像っ!」

やたら長い白髭。
ころんとした体型。
そしてまばゆい頭部。

美琴「お父様……」
俺「えっ」

このおっさんが、カーチャンのオヤジ?
つまり俺のお爺ちゃん!?

爺「ミコトちゃんや。元気にしとるかの?ミコトちゃんが国を出奔してからガガッ年。やっと居所を突き止めたぞい」

家に投げ込まれた時の衝撃でか、機械の調子があまり良くないみたいだ。所々にノイズが交じっている。

爺「どうやら子供が二人居るみたいじゃのぉ?男の子がガガッガー。そこでな、我が国もそろそろ王の交替をしたくてだの」

国?王?まさか、カーチャンはどっかの国のお姫様だったとでも言うのか?

爺「俺君にだな、国を継いでほしいのじゃ」
俺「は……俺っ!?」

いやいやいや。なんで俺なんだよ。
普通は長男の優都だろうが。

爺「そう言うわけでの、婚約者を用意したから好きなおなごを選んで国に帰ってくると良いぞぅ」

婚約者?
いや、ちょっと、俺まだ結婚とか考えてないんですけど。第一付き合ったりとかも……。

1 なんで俺なんだよ!
2 優都で良いだろ!

>>なんで俺なんだよ!

別に俺は金銀財宝ハーレムうっはっはーに憧れはない。と言えば嘘にはなる、が。

俺「なんで俺なんだよ!」
女の子「あれは録画されている立体映像です。会話機能はありません、マスター」

大人しくなった女の子は俺の腕の中でそう淡々と告げた。

俺「ああ、そうだよな。ありがと」
女の子「っ!?いっ、いえ……」

ふっ。女の子は俯いてしまった。
呆れられちゃったか?
にしてもこの子、耳がうっすらと桃色だな。

爺「しかしの、おなごらは婚約者です、って俺くんには言えないからの。俺くんが探してあげるんじゃぞ?」

は、いや。なんだよそれ。
つまり、通りすがりのオバサンとかに俺の婚約者ですか?とか聞かなきゃいけないってことか?
いや、頭おかしいやつだろ、それ。

爺「わしが選んだおなごたちばかりじゃからの。きっと俺君の目に止まるじゃろ。ふぉっふぉっふぉ」
?「レイシス様、ドキドキ猫耳萌萌じゃんけんのお時間でございます」
爺「おぉおぉ。もうそんな時間か。それじゃあ、またの、ミコトちゃんに俺君。ミコトちゃん、連絡くれないなんてわしゃガガーッビッ」
美琴「あらぁ?壊れちゃったわね」

うふふ。と笑うカーチャン。
でも、今、カーチャン、叩き潰したような。
なんて、野暮なこと聞いちゃいけないよな。うん。

美琴「多分、ほとんどわかったとは思うんだけど……」

1 カーチャンお姫様だったんだな
2 そうなるとこの女の子は
3 なんか凄いことになりそう

>>そうなるとこの女の子は

俺「この女の子も俺の婚約者!?」
女の子「違います。わたしはマスターを護るものです」

護る護る、って。
そんなに危ないのか?

女の子「マスターはもう、次期国王なのです。普通の人ではないのです」
美琴「あらあら。勝手に決めるのは良くないわぁ」

うふふ。とカーチャンが笑う。でもそれはいつものような優しい笑みではなく、どこか陰りがあった。

美琴「ごめんなさいね、俺ちゃん。いきなりこんなこと言われても、困るわよね」
俺「いや、まぁ、びっくりはしたけど、カーチャンが謝る必要は無いだろ?」
美琴「俺ちゃあん……」

うるうる。とカーチャンの目が潤んでいく。
女の子がカーチャンにハンカチを手渡した。

俺「で、まぁ、俺は次期お偉いさんになるかもしれないからそのSPがお前ってこと?」
女の子「そうです。それに、婚約者と言うことが露見すれば、力ずくでマスターを手に入れても良いことになっております」

おいおい。なんだか物騒な話になってきたぞ?

女の子「その為にマスター、わたしがいるのです」

力に対抗できない俺を護る為に。
また、女の子を倒せるほどの力があるのかどうか。
それを見極める為にも居る。と、付け加えた。

俺「あー、まぁ、よろしく」
女の子「はい」

要は、この女の子は俺の護衛兼婚約者を見極める審判と言ったところか。

美琴「それで、お名前は?」
タナ子「?名前はありません。型番はヒューマノイド。識別はタイプTです」
俺「名前が無いって、不便だよな……」

1 俺が付けても良い?
2 カーチャン、なんかある?
3 人間じゃないなら名前いらないよな

>>俺が付けても良い?

女の子「名前の有無などたいしたことではないと思いますが」
俺「いや。不便だし、名前はある方が良いよ」

名前で呼んだほうが親しみやすいだろう?
そう言うと、女の子はわからない。と言うように小首を傾げた。

俺「俺が付けても良い?」
女の子「わたしのマスターは貴方です。どうぞ、お好きなように」

よし。
それじゃあどうするかな。
初恋の相手とかは胸が痛すぎるし、アニメのキャラクターはそれはそれで胸が痛すぎるし。
ここはやっぱり原点回帰でいこう。

俺「タナ子!」
タナ子「タナ子……それがわたしの名前ですね。わかりました、マスター」

ぺこり。と女の子――タナ子は頭を下げた。
本当に従っちゃうんだな。
もっと、ココアとかエリザベスが良いとか言うかと思ったんだが。

美琴「タナ子……珍しいお名前ねぇ」
俺「元は本棚だったはずだからさ。そこから……って、俺の本棚はどこにいったんだ?」
タナ子「国王になれば幾つでも本棚をご用意できますよ」
美琴「タナちゃん。助長させちゃダメよ?」

とにかく、なんだか大変なことになってきたみたいだ。

俺「とりあえず、疲れたから部屋で休むな」
美琴「それじゃあ、後でおやつ持っていくわね」

部屋に戻ろうとすると、タナ子も俺にくっついてきた。
俺が不思議そうに見ると、タナ子は当然。と言った顔で俺を見る。

タナ子「わたしはマスターの護衛ですから」

この様子だと本当に、どこまでも付いてきそうだ。

俺「はぁ……」

久しぶりに頭を使わざるおえない状況だったからか、酷く疲れた気がする。

1 こんこん
2 こつん
3 ぐぅ


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