3週目/タナ子下僕ルートまでスキップ/柚葉 ED 6
〜三冊目〜
腕の中のぬくもりは、確かにあったはずだった。けれど。
俺「タナ、子……」
どうして、今は無いんだ。
タナ子「おきてください。朝ですよ」
ぺたぺた。と頬に温かい感触。
ああ、良かった。
タナ子は、確かに居た。
起こすんなら、せめてぺちぺちの力くらい無いと駄目だぞ。なんて考えてしまう。
1 もうちょっと寝た振り
2 おはよう、タナ子
3 バイトまでまだ時間あるだろ……
>>もうちょっと寝た振り
俺はそんなんじゃ起きないぞ、タナ子。
さぁ下僕としての腕の見せ所だぞ、タナ子。
タナ子「はぅ……おきないですか」
なんだ、諦めるのか?
ぺたぺたと俺の頬を叩いていた柔らかい感触が消えた。
タナ子「起きて……俺にい?」
俺「ッ!?」
ガバッ。俺は電流でも流されたかのように勢い良く起き上がった。
今、タナ子はなんて言った!?
タナ子「はわ……本当におきました。ゆうおねーちゃーん!」
タナ子は、ぱたぱたと走っていった。
ドクドクと心臓が早鐘を打つ。
俺「――っ」
タナ子にお兄ちゃん扱いされたのが嬉しいには嬉しいんだけど、そうじゃなくて、今。
俺「俺の、名前……」
確かに俺の名前を呼んでくれた。
今までタナ子は俺が最初に下僕だとかちょっとふざけたことを言ってしまったからか、名前を呼んでくれたことはなかった。
優都が先に呼ばれててちょっと。いや、かなり。悔しかったぐらいだ。
でも、今。
俺「……すっげぇ嬉しいかも」
簡単に着替えてリビングに行くと、優都とタナ子がソファーに座っていた。カーチャンは台所で朝食の準備をしている。
タナ子「ゆうおねーちゃんが言った通りでした」
優都「ガバッって起きた?」
タナ子「はいっ!がばーでした」
優都「そう。良かったわねぇ 」
タナ子と優都、二人で楽しそうに会話してやがるな。
1 タナ子と優都の間に座る
2 優都の隣に座る
3 カーチャンの手伝いをする
>>タナ子と優都の間に座る
俺はタナ子と優都の間に半ば強引に座った。
俺「兄貴か?タナ子に吹き込んだのは」
優都「あらぁ。お寝坊さん。ユウは、たぁちゃんが俺きゅんのこと、なんて呼んだらいいかわらないって言うからぁ」
タナ子「きゃあ!ゆうおねーちゃんっ、ないしょっ、ないしょっ!」
ぎゅぎゅうっ。俺の膝の上を通過しながら必死に優都にしがみつくタナ子。
イライラっ。なんだ、これ。イライラするぞ。
べりっ。とタナ子を優都から引き剥がす。
優都はその様子をニコニコと笑って見ているが、それが胸くそ悪かった。なんだか優都の方が一枚上手な感じがして余計イライラする。
美琴「はい。三人ともじゃれてないで朝ご飯、食べちゃいなさい」
タナ子「はわぁ!ごはんー」
優都「タナ子チャン、可愛いな」
俺「ッ、兄貴……っ」
俺は、優都が仕事に行くまで優都を威嚇して過ごした。
優都「それじゃあ、行ってくるわねん。たぁちゃん、今度から俺にい、って呼んであげなさいね」
ばっちん。とウインクを残して優都は出て行った。
やっと仕事に行ったところで一息吐く。
タナ子「こわいかお、してます」
俺「……ごめんな」
タナ子「いえ」
嫉妬だなんて、子供みたいな感情みっともないな。
俺「タナ子?」
ぎゅう。タナ子が俺に抱きついてきた。
タナ子「やっぱり、ちがうです。……俺にいが、いいです」
さっき優都に抱きついた時の事を言ってるのか?
俺「いつでも抱きついてきていいぞ」
タナ子「はいっ」
そろそろバイトに行く時間だな。
タナ子「行っちゃうですか?」
さすがにバイト先に連れていくわけにもなぁ。
1 ごめんな
2 すぐ帰ってくるから
3 …………
>>すぐ帰ってくるから
寂しそうな瞳で見上げてくる。この表情に、俺は弱い。
でも連れて行くわけにもいかない。
俺「すぐ帰ってくるから」
くしゃり。タナ子の頭を撫でて俺は仕事先に向かった。
ショッピングセンター内のそこそこ大きい本屋が俺のアルバイト先だ。
俺「おはようございます。お疲れさまでーす」
?「あら〜。俺くん、おはようございます」
上品なのんびりとした声に振り向くと、鞠華(マリカ)さんが立っていた。
鞠華さんは俺の先輩だ。
お菓子会社のご令嬢で、本来ならアルバイトなんてしなくてもいいはずなのだが、鞠華さんたっての希望で社会勉強も兼ねてここでアルバイトしている。
俺「鞠華さん、これありがとうございました」
一冊の本を鞠華さんに返す。
鞠華「あら〜。もう読み終わったんですの?」
ふうわり。鞠華さんが笑うと花が舞っているような感覚に陥る。
俺「はい。最後の結末にも驚きましたが、俺としては中盤の」
鞠華「脱走?」
俺「はい!」
鞠華「わたくしも、あの場面が一番驚きましたの」
鞠華さんとは本の趣味も作品の捉え方も似ていて、いつも話すのが楽しかった。
鞠華「いっぱいお話したい所ですけれど、そろそろお仕事しないといけませんわね」
俺「あっ、すみません。つい」
鞠華「くすっ。良かったら、今日お仕事が終わりましたらお茶に致しませんか?」
よく本を返した後は読んだ作品の感想を言い合うために鞠華さんとお茶をしていた。
俺は……。
1 良いですね
2 すみません
3 あれ?柚葉?
>>あれ?柚葉?
鞠華「俺くん?」
俺「あっ、すみません、鞠華さん。ちょっと」
本屋の前に柚葉(ユズハ)が居た。
柚葉は俺の幼馴染みだ。エプロンを着けているところを見ると、家の手伝いをしている最中だろう。買い出しにでも来たのか。
こいつの家は、昼は食堂、夜は居酒屋を営んでいる。
俺「柚葉、何してんだ?」
柚葉「あっ、俺……」
ギクッ。と固まる柚葉。
手に持っている本を見て理解する。
優しいお菓子の作り方。
初心者さんのスイーツの作り方。
俺「お菓子、作る気なのか?」
止めろ。止めてくれ。死者が出る。
俺の願いとは裏腹に、柚葉は、うん。と頷いた。
柚葉「俺はさ、お菓子作るの上手いじゃない?だから、その……今日仕事終わったら教えてほしいんだけど……」
今日は……。
1 先輩と先約があるんだ
2 しょうがねぇなぁ
3 ちょっ、あのひらひらした格好!?
>>しょうがねぇなぁ
まぁ、俺がお菓子作り上手くなったのは柚葉のせいだしな。
俺「しょうがねぇなぁ。付き合ってやるよ」
柚葉「ありがとう、俺」
へらっ。と笑う柚葉は、正直、女の子らしいな、と思った。
俺(こいつ……こんなにかわいかったか?)
柚葉「それじゃあ、帰りにウチに寄ってってね」
そそくさといなくなる柚葉を見送って俺は仕事に戻った。
仕事を定時で切り上げて鞠華さんに挨拶をして帰る。
もうそろそろ夕方か。
柚葉の家に向かわないとな。
俺「ん……?」
なんだか忘れていることがある気がするな。
1 まぁいいか。柚葉の所行かないとな
2 なんだったかなー
>>なんだったかなー
そう。何かを忘れている気がする。
俺『早く帰ってくるから』
そうだ。タナ子に早く帰ると約束したんだった。
このまま柚葉の家に行くとなると、帰りが遅くなるだろう。
俺「どうするかな……」
1 電話をかける
2 一旦家に帰る
3 いや、まぁ、なんとかなるだろ
>>一旦家に帰る
タナ子に早く帰るって言ってあるしな。
ここは一回家に帰ってから柚葉の家に行くか。
俺「ただいまー」
あまり大きい声ではなかったのだが、そう言うとすぐにぱたぱたと走ってくる音がする。
タナ子「お帰りなさいですっ」
がちゃ。リビングへと繋がる扉が開くと、ひょこり。とタナ子が顔を出した。嬉しさからか頬が微かに桃色に染まっている。
今日は、あれだ。不思議の国のアリスみたいに青いワンピースとエプロンだった。
優都、良い仕事したな。
タナ子「あのっ、あのですね」
俺「ごめんな、タナ子」
タナ子「……はい?」
俺はこれから柚葉の所に行くと伝えると、タナ子はしゅん。と大人しくなった。
タナ子「えっと」
俺「ごめんな。カーチャンも居るだろうし、もう少ししたら優都が帰ってくるから。な?」
聞き分けてくれ。
俺がすまなさそうに笑うと、タナ子は何かを言い掛けていたが、それを押し殺すかのように、ふにゃり。と笑った。
タナ子「はい。だいじょうぶです」
俺「ん」
わしゃ。と頭を撫でたが、タナ子はどこか辛そうだった。頬もいつも通り白く、いや、少し青みがかっていたかもしれない。
俺「さて、と」
家に寄ったからちょっと遅くなっちゃったな。
俺「柚葉ー?」
お店の前に着いたが、返事は無い。
勝手知ったる柚葉の家だ。裏口に回ってお店に入る。
俺「……ん?」
1 何か焦げ臭くないか?
2 何か甘ったるい匂いがするな?
3 酢酸カーミン臭いぞ!?
>>何か甘ったるい匂いがするな?
すん。鼻に入ったのは甘い香りだった。
この匂いは決して悪くない。が。少し濃すぎる気がするな。
俺「柚葉?」
柚葉「あっ。ごめん、来てたんだね」
柚葉は一旦コンロの火を止めて俺を見た。
柚葉「ちょっと遅かったから心配したよ」
俺「悪い。ちょっとな」
さっとエプロンを付けて柚葉が煮ていたものを見る。
俺「砂糖?」
柚葉「うん。カラメル作ろうと思って」
もう一度見る。鍋にはたっぷりと色が変わり始めた砂糖が入っている。
俺「この量はカラメルっつーより、べっこう飴だろ」
柚葉「ええっ?もっと少なくて良かったの?」
今日作ろうと思っていたのは林檎のケーキだ。
確かにカラメルは必要だが、こんなに沢山の量はいらない。と言うか使ったら甘過ぎて吐く。
まったく。醤油だのみりんだのの味付けの調整は絶妙なのに、どうして甘いのは駄目なんだ。
俺「柚葉、予定変更。今日はべっこう飴講座な」
柚葉「うん。ごめん……」
俺「いや、べっこう飴だったら色々な形が作れるからな」
1 柚葉のシルエットでも作るか?
2 うさぎとかも作れるぞ
3 リボンとかも作れるぞ
4 本とかも作れるぞ
>>柚葉のシルエットでも作るか?
俺「柚葉のシルエットでも作るか?」
柚葉「あたしっ!?」
カッ!と柚葉の頬が赤くなる。
よし。ちょっと柚葉に悪戯してやるか。
ニヤリ。と笑って両手をわきわきさせる。
俺「でもそうだなぁ。触ってみないとわからないよなぁ」
柚葉「なっ!?ばっ、馬鹿なこと言わないでよっ」
するり。柚葉の背後に回って体の線にそって両手を滑らせる。
柚葉「んっ!?」
俺「砂糖を大量に入れてべっこう飴に変えたのは誰だったかなー」
柚葉「俺っ、ずるいっ、よ」
熟れた林檎のように頬を染める柚葉を見て、ドキリとする。
俺「今の柚葉、すっげーかわいいかも」
柚葉「かもって、なによっあ!?やっ、ダメッ」
腰を撫でていた手を胸へと持っていく。意外とあるな。
こいつ、着痩せするタイプか?
ゆっくりと胸全体を触ると、時折ぴくりと柚葉が揺れた。
柚葉「んぁ、もっ、あ……やめてぇ」
俺「もうちょっと触らないとわからないって。ほら、動くなよ」
きゅ。とエプロンの上から突起を摘むと柚葉の動きが止まる。
右手は胸を触ったまま、左手を下へと移動させる。少し固めの二つの膨らみに手を這わせると、柚葉が途端に動いた。
柚葉「あっ、あ、や、ほんっと、俺っ、ダメッ」
柚葉は足をきつく閉じて身を捩っている。
俺「柚葉……?」
1 柚葉、ここ……
2 悪かったよ、ごめん