(臨にょ静/結婚してる/チビ=子ども)




「お前のデータフォルダ、気持ち悪いんだな」

「え?」

「だから、お前の携帯のデータフォルダ…」

「うん、何を言われてるかはわかってるよ?」


リビングのソファに並んで座りスマートフォンで情報を眺めていると、テレビを見ていた静雄がおもむろに口を開いた。液晶画面から顔を上げた臨也は意味がわからないといった表情で彼女を見返す。


「なあにシズちゃん、俺のスマホ勝手に見たの?浮気とか気になっちゃった?ヤキモチとかかあいいね。でも残念。あれはシズちゃん用だから、君しか登録してないんだよ」

「はあ?別に俺が見たくて見た訳じゃねぇし。ただ、昼間お前の携帯をチビがいじくって見せてくれただけだ。それにお前まだそんな無駄な使い方してんのか?携帯代勿体ねえ」


テレビ画面に頭を向けたまま大して興味も無さそうなトーンで会話する静雄に、臨也は少しむっとする。俺よりテレビが大事なの?自分でも笑えるくらい子供じみた独占欲だった。


「いーじゃない俺稼いでるんだから。それより浮気とか気になんないの?シズちゃんがあんまりつれないと、俺しちゃうかもよー?」

「したらソッコー離婚してやる」

「冗談だよ。相変わらず短気なんだから…ねえシズちゃん、」

「あ…なんで消すんだよ見てたのに」


リモコンでテレビの電源をぶちりと切ると不機嫌な表情を浮かべた静雄がやっと臨也の方へと顔を向けた。うん、怒った顔も可愛い。


「テレビばっかで俺のこと見てくれないから」

「お前なぁ…そんなちっせぇヤキモチ妬くなよ」

「妬くよ。だって俺、シズちゃんのこと大好きだもん。データフォルダが気持ち悪いほどシズちゃんの写真でいっぱいなぐらい、俺は君がすきなんだ」


さっきまで騒がしかったテレビの音も消え、静かな室内に真摯な臨也の声だけがおちる。


「〜ッ!!おまえってホントばかだな!」

「うん、そうかも」

「ばかだ、ばか ばか…!そんでもって恥ずかしいやつだ!」

「うん」


ふわりと肩を抱くと、照れ屋な静雄は真っ赤になった顔を臨也の胸に埋めてきた。そんないじらしい姿を目にすると愛しさがまた込み上げてしまう。出逢ってから随分と、結婚してからだって何年も時間を共にしてきた筈なのに、臨也が静雄を想う気持ちは変わることがなかった。むしろ日ごと増している気さえするのだ。


「ねえシズちゃん。すきだよ」

「……さっきも聞いた」

「うん。何回だって言いたいんだ」



だって君がすきだから



「そういえばさっき、データフォルダをチビすけと一緒に見たって言ってたよね?」

「あ?」

「いーなあ、俺も見たかった!そんな楽園みたいな構図!あわよくば写真に収め…」

「フォルダが嫁と子どもの写真ばっかりとか、お前つくづく気持ち悪いよな」


END



嫁バカ親バカな折原さん
2012/3/30 沫金
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テーマ「推しとの恋」
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