「うわ、本当に欠けてくよ…ねぇシズちゃん、」

「ふわぁぁぁ…!」



『日蝕を見ようよ』

そう言ってシズちゃんの住む古びたアパートに押し掛けたのは昨晩のこと。すっかり寝る態勢に入っていた恋人は普段の判断力が鈍っているのか 勝手にしろ。の一言で寝息を立て始めてしまったので、お言葉に甘えいそいそと彼のせんべい布団に入り込んだのだった。(んで殴られた。)


「シズちゃん、気に入ったの?」

「んー…」


余程感動したのか、俺が買ってきたグラス越しに食い入るように太陽を眺めるシズちゃん。の興奮してる横顔を眺める俺。彼の熱っぽい視線を一身に受ける太陽にはかなり妬けるが、恋人の珍しい表情を拝めたので50:50ってことにしてやろう。


「あ!全部入ったぞ!」

「あは、なんかその表現エロいね」

「は?何言ってんだてめぇ」


とうとう池袋上空の太陽が月と重なり、見事に金環が出来た。
今が、チャンスだ。


「ね、シズちゃん。こうやって手を伸ばせば金色の輪っかに手が届きそうじゃない?ほら、あと少し…あ!取れた!見てシズちゃん、俺達だけの金環日蝕だ…」

「よし、日蝕見れたし仕事行くか!」

「うええええっシズちゃん全く聞いてない??」


そんな!馬鹿な!俺がこの日の為に用意した金環日蝕リング及びシチュエーションその他諸々がシズちゃんのトンデモ鈍感力によって粉々に砕け散った…流石俺の愛しのクラッシャー…!


「おい臨也、俺出掛けるんだけどよ、お前どうすんだ?」


打ち拉がれる俺をよそにマイペースに支度を終えたシズちゃんがひょっこりベランダを覗き込んだ。そのきょとん顔も可愛いよマイハニー!


「もうちょっと寛いでから帰るよ…」

「あっそ」

「あ!今晩空いてる?」

「仕事終わりなら」

「じゃあご飯食べに行こうよ。迎えに来るから」

「わかった」

「じゃあ、お仕事いってらっしゃい」


素早くキスしてやり真っ赤になった頬に幾分か気分も良くなった。バタンと勢い良く閉じられた扉(勿論彼の照れ隠しだ)をニヤニヤ眺めながら、頭の中では既に夜の算段を始める。


「これだからシズちゃんは退屈しない…シズちゃんラブ!」


待ってろよシズちゃん。とびきり素敵なレストランでとびきり素敵なプロポーズをしてやるんだから!


END



ついったのRTがツボだったので(笑)ただのギャグ
2012/5/21 沫金
an annular eclipse day!
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