現パロ/2種類



ブレイクのターン


(綺麗、だな)

このところ互いに残業やら出張やらで電話越しの会話さえままならない日々が続いていた。今日はやっとのことでどうにか重ねた休日。実に一月振りだ。久々に会うんデスシ、たまには遠出でもドウデス?との提案に、断る理由も無いのでオレは素直に首を頷かせた。

そして今、ブレイクはオレを助手席に乗せ愛車である真っ赤なスポーツカーを運転中だ。普段まじまじと見ることもない相手の横顔。なんだか目を逸らせなくってぼんやりと見詰めていた。


「ギルバート君?」

「あ、悪い…何だ?」

「イエ、別に。ただ反応が無かったので寝てしまったのかと思っただけデス」


すまん、と再度謝罪を述べつつブレイクを盗み見ると、やはりいつもと違う雰囲気で少し落ち着かない。普段のスーツ姿でなく私服だからかもしれない。不意に視線だけが此方に向き、どくり、体温が上がるのが分かった。


「どうしたんデス、先程カラ。もしかしてワタシに見惚れちゃいましたカァ〜?」

「…あぁ」


オレの素直な同意に、ブレイクはあの紅色の隻眼を少し丸くし、そして笑った。


「ハッ、馬鹿ですかネェ君って子は…こんなオジサンつかまえて、」

多分、思い上がりなんかじゃなくアイツは嬉しげな声をあげ、すっと目を細めた。まるで眩しいものを見る時のように。


「嬉しいコト言ってくれる子には、ご褒美デス」

「わっ…!?」


目線を前に戻したブレイクの腕が、此方を向かずに器用に伸びてきてオレの頭をワシャワシャと掻き回してきた。オレはその手が言葉が暖かくって照れ臭くって、そっぽを向いて小さく悪態を吐いた。


END




ギルのターン


仕事の都合で付き合いの食事会があり終電を逃してしまった、と連絡を入れたら、親切にもギルバート君が迎えに来てくれました。ワタシとしては別にタクシーでも構わなかったんですがね、主婦の鏡ギルバート君が無駄な浪費をするなとかなんとか煩くて。そんな訳で大人しく彼のお迎えを受けたのは良かったのですが…

(ムカつきますネ)

助手席にワタシを座らせ運転するギルバート君をぼんやりと眺める。普段、横を歩く時は必ずワタシの右側を選ぶ彼の、左からの横顔というのは希少価値。そんなワタシの視線に全く気付く気配の無い彼は今、窓を開け愉しげに紫煙をくゆらせている。気分が良いのだろうか、薄く微笑んでいる彼。その表情と煙草を持つ手とが妙に様になっていて気に食わない…ギルバート君のクセに。


「そんなモノばっかり吸ってると病気になっちゃいますヨォ〜?」

「うるさい。余計なお世話だ」

「心配してあげてるのニィ」


ワタシの言葉によって顰められた眉。せっかくのイケメンが台無しデス、とからかうとまた面白いくらいに噛みついてくるギルバート君。本当にからかい甲斐がありますねぇ。ちょっと見た目が成長したからといって中身は何時まで経っても可愛いまんま。ワタシから見ればまだまだお子様です。


「ほーら、隙アリ!」

「あ、…っ!?」


信号で車が止まった隙をついて彼の指先から嗜好品を攫い、次いで唇を重ねた。瞬間で離れ彼を見ると、月色の瞳は閉じられることなくまんまるで満月のようである。その顔がどうにも幼くてワタシはつい口元を緩めた。


「ギルバートくーん。信号変わってますヨー」

「わっわかってるっ」


ハッと我に返りアクセルを踏み込む彼を見てほくそ笑む。真っ赤に染まった顔で悪態を吐く姿は可愛げが無く、して可愛い。これで無意識なだけにつくづくタチが悪い。


「事故らないで下さいネー?」

「わかってるっ」

「どうしたんですカ?顔が真っ赤ですケド」

「うううるさいっ黙れっ!」


これだから止められない。この子と過ごす時間は飽きることが無いのだ。こんな男に惚れられてしまったのが運の尽き。さあ、これからもワタシを愉しませて下さいナ。


END

2010/10/11 沫金
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