パンドラでの一仕事を終え、ギルバートは重苦しい外套を脱ぎ捨てた。次いでスカーフを緩めてベッドに倒れ込む。ギシリ、と台が悲鳴を上げた。


「ギルバート君、」

「…ん?何だ」


何故か自分に付いて一緒に部屋に入ってきた銀髪の道化師。そのピエロに名を呼ばれ、ギルバートは返事をして視線だけ声の主に向けた。何時に無く真剣な声色に無意識に身体を硬くする。一体何を言われるんだ?


「その態勢…すごくムラムラしマス」

「え?…はあぁぁぁっ!?ちょっ待て!!おいっ!」


妙に真面目くさった顔で何を言うかと思えば、意味不明な言葉を吐き出すブレイク。そのままいそいそとベッドに上りのしかかってくる上司に恐怖を感じギルバートは制止をかけるが、効果は無い。必死の抵抗虚しく、何時の間にか完全に覆い被さられている状態になっていた。


「…んっやだ、」

「なーに恥ずかしがってるんですカ!昨夜だってあんなに可愛くよがっ…」

「うううるさい!黙れっ!!」


首筋に唇を寄せられ顔を真っ赤に染めて抗議するギルバート。羞恥に薄らと涙目になった瞳は、彼が幾ら相手を睨んだ所で何ら威嚇の意味を為さない。素直じゃない部下の行動にブレイクはあからさまに眉を顰めた。


「ハァ、昼間の君はホントに可愛くないデス」

「可愛くなくて結構だ!!いいから退け!」

「イーヤーデースー!」


首筋に顔を埋めたままブレイクは駄々をこねるように首を左右に振った。その度、彼の柔らかな銀髪が頬を掠めるのがこそばゆい。相手は大の大人、ましてや男だというのに動くと甘い香りがするのも少し腹立たしい。


「なっ!?本当に離れろって!!うわっ??くすぐっ…たいっ」


ブレイクの甘い香りに意識を取られていたギルバートは、不意にちろりと舐められ我に返った。その拍子にブレイクの真っ赤な瞳とかち合う。ヤ バい、目が逸らせ、な…


「…せっかくのフリーな時間なんですカラ、ワタシだってたまには君に甘えたいんですヨー!」

「ブレイ ク、」

「ギルバート君…」


拗ねたように唇を尖らせるブレイク。彼に甘えを含んですり寄られ、ギルバートはへにゃりと眉を下げた。今日もこうして彼のペースになっていく…つくづく自分はコイツに弱いと実感した。

ブレイクの白く細い指先がギルバートの癖の強い黒髪を優しげに撫で、頬を滑り顎を軽く持ち上げた。不安げに見つめる青年の金色の瞳。(ワタシの愛しい左目。)ブレイクは愉しげに目を細めて眩しいモノを見るように微笑んだ。普段見られない彼の自然な表情に腹の奥がむず痒い。ゆっくりと紅い隻眼が近付き、ギルバートは瞼を下ろした。顎に添えられた指先は青年の首を伝い、やがて触り心地の良い布に到達する。パサリ。もとより緩められていたスカーフは、器用にギルバートの襟元から抜き取られ床に、堕ちた。



白い道化師はほくそ笑む。


「何す、んっ…ひっ!??」

「ダ・カ・ラ!ギルバート君もワタシの為に存分に甘い声聴かせてくれればいいんですヨ☆」

(コイツに絆されそうになった俺が馬鹿だった…!!)


END



初めて書いたブレギル。お粗末様です
2010/7/26 沫金
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