ブレギルとオズ/学パロ/ハロウィン





10月31日 ザークシーズ=ブレイク欠席


「えー、今日ブレイク休みなのー?」

「オズ、あんなヤツでも一応教師なんだから申し訳程度に先生をつけろ」

「ハイハイ、ギルったらいちいちコジュートみたい」


昼休み、何故か我が物顔で職員室で寛いでいるオズを窘めながらギルバートは溜め息を吐いた。最近は毎日ここに来ている気がする。ひょっとしてオズ、教室で過ごしたくないのか?クラスでイジメられてるんじゃ…!!


「あぁ、俺イジメられてるとかじゃないからね。うちのクラスにそんな低俗なもんないから、安心して?」

「そ、そうか!なら良いんだが…ってオレの心の中を読むなッ!」

「ギル全部口に出してたよーう」


唇を尖らせ文句を言うオズは大層可愛らしかったのだが、そこから一変して意地の悪い笑みを浮かべた。ぞくりと背筋に何かが走る。


「それよかさ!俺が何でギルのとこ来るか教えてあげようか?」

「え…」

「ギルのことが大好きだからだよ。だから、ちょっとでもいっしょにいたいの」


ずいとオズの頭が近付き、耳元で心地良いアルトが響いた。幼さが多く残るクセに妙な色気を孕んだアンバランスな声色に思わずくらりと眩暈を感じる。動揺が隠し切れていない指先に情けないと思いながら、オレは慌ててオズの細い肩を押しやった。ニヤニヤと笑う少年は何とも愛らしい様相で小憎たらしい。


「お オトナを揶揄うんじゃないッ!」

「揶揄ってなんかないよ!本気なのにさー…」

「おおおオズッ」


再び近付いてきた彼に恐怖を感じた瞬間、鐘が鳴りオズがパッと離れていった。た 助かった…。


「ざーんねん!続きはまた今度ね」

「次があってたまるかッ!」


へらりと笑ったオズに、脱力してしまった。彼はいつでもそうだ。掴み所がなく何でも笑顔で誤魔化してしまう。そんなところが少し、アイツと似ていた。


「あ、そういえばオズ。ブレイクに何か用だったのか?」

「え?…ああ、そうそう!ハイ、トリック オア トリート!」

「え…あ。今日ハロウィンだったか」

「そう!だから何時もお菓子持ってるブレイクにお菓子貰いに行こうと思ってたのにさー休みなんだもん」

「そうか、すまん」


満面の笑みで両手を突き出してきたオズ。その笑顔に応えられそうもなくてつい謝ってしまった。…ん?ブレイクが悪い訳で、断じてオレは悪くない、ハズだ。


「あは、何でギルが謝るの。あ、お菓子持ってないから?そんなの予想通りだから気にしなくて良いよ」

「は……あ、」

「はいドーゾ!チョコレイトだよー疲れた時は甘いものでしょ?じゃあ俺授業だから、バイバイ!」

「あ オズ!……行ってしまった」


すっかりお礼を言いそびれた。後できちんと言おう。本当にオトナのような顔をしたりコドモのような言動を取ったり心臓に悪い少年である。ひとつ、苦笑いが零れた。


「ハロウィン、か」


たしか風邪を拗らせてダウンしたと聞いている、白い男が脳を掠めた。甘いものに目がないあの男は、きっと今日という日を楽しみにしていたことだろう。まあ日頃の行いのせいだ。


「うわ、ヤバい!オレも授業…!」


午後の始業を告げる本鈴が鳴り響き、思考を現実へ戻した。


**


「ん……ギルバート、くん…?」

「ああ、起きたか」

「えーっと…何でいるんデスカ…?」

「いちゃ悪いか?」

「イエ、悪くはないんですケド…」


寝起きだからか、歯切れ悪くもそもそと喋るブレイク。無造作にシーツ上に散らばる髪の毛や無防備な表情が、何だか新鮮で面白い。眺めていたのが気に入らなかったのか、じとりと睨まれた。


「その顔、なんかムカつくんで止めて下サイ」

「いつも散々馬鹿にされてるから、仕返しだ」

「オヤ生意気」


昼休みから午後の授業の間、もやもやもやもやとブレイクのことを考えてしまい、結局世話を焼きに来てしまった。別に心配だったから、とかじゃないんだからな。勘違いすんなよ。


「そんな生意気な子はイジメちゃいまっ…ゴホッ」

「あー、無理して喋んな。お前風邪なんだろ、ちゃんと寝てた方が良いぞ」

「……」


いきなり話したせいか咳き込み始めたブレイクの背をさすってやると、悔しそうな顔を向けられる。弱っているコイツには悪いが、いつもと立場が逆で実に気分が良い。


「…ギルバート君、今日は意地悪デスネ」

「そうか?」

「ちょっと優位に立ったからって調子に乗ってると、後で痛い目見ますからネ!」

「分かったから布団かけて寝ろ、な?」

「…フンッ言われなくとも!笑い物にしに来たんだったら早く帰って下サイ!全く、冷たくて非情な恋人デスこと!!」

「あ そうだ、」


完全に拗ねてしまったブレイクの頭上に、思い出したようにスーパーで購入してきたものをぶちまけた。バラバラと落っこちたオレンジや紫、色とりどりなお菓子たち。それらの内のひとつを摘み、怪訝な顔をされた。


「何デス、コレ」

「お菓子だが」

「もしかしてお見舞いのつもりデスカ〜?」

「ハロウィン」

「へ?」

「ハロウィン!お前、やりたかっただろうなと思って買ってきてやった」


ぱちくりと紅い眼を瞬かせたのち、ブレイクの頬がうっすら朱に染まっていった。と、同時にバサリと布団が波打ちすっぽりと隠れてしまう。あっと言う間に、謎の布団饅頭の完成だ。中からくぐもった不機嫌な声が聞こえてきた。


「別にハロウィンなんて楽しみじゃないデス!余計なお世話でしたネ!!」

「そりゃ残念だな…でも、オレは甘いもの食わないからお前にやるよ」

「どーしてもって言うのならば貰ってあげマス」

「ふはっじゃあ、どーしても」



treat and treat!



…まあ、後日イタズラという名の仕返しをされたのは言うまでもない。


END



2日遅れですがハロウィン小話です!たまには、優位に立って余裕ぶってるギルも良いじゃない!って思いながら書いてました^^
念の為、あくまでもブレギルだと言い張ろう。ギルブレじゃないよ

2011/11/2 沫金
(10.31 happy Halloween!)
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