きっとそれは何よりも、



海賊王になって、世界の全てを手に入れたら、その先に何があるのだろう。



夢を見た。
それは私が知るはずのない未来。

夢の中でルフィは海賊王になっていた。


その隣に私は居ない。



カーテンから差し込む光で朝が来たことを知る。

瞬きを何回かして、まだぼんやりする頭を覚醒させる。


今、何時だろう?


背中にぬくもりを感じて寝返りをうつと、いつの間に潜り込んだのか、侵入者はスヤスヤと寝息を立てて気持ち良さそうに眠っている。まるで安心しきった子供みたいに。

寝息に合わせて規則正しく上下する胸の動き。
そっと左胸に耳を当てると聞こえて来る確かな鼓動。


どれも、彼が生きている確かな証。

何よりも尊い命。


私は彼が夢のためにその命を懸けている事を知っている。
怖くはない。信じているから。

ルフィは海賊王になる。必ず。


夢で見たように。


この冒険にもいつか終わりはくるのだろうか。

海賊王になって、この世の全てを手に入れたら、ルフィはどうするんだろう…?


今はまだあどけない顔で眠る彼を見つめる。
頬を指の背で撫でると相変わらず柔らかい。短いけれど、ちゃんとある睫毛を人差し指でなぞる。そして左目の下の大きな傷。

誰よりも一番近いこの距離で、彼に触れて、彼が隣にいることを確かめる。

すごく胸の中が温かくなって幸せな気持ちになれるのに、何故かふいに、胸が締め付けられたように苦しくなる。

「ん、んー…。」

私の掌の中で、ルフィが小さく瞬きをして身じろぐ。

「起きた?」

鼻先が触れるか触れないかの距離に近づいて囁きかけると、そのままルフィの腕の中に捕まってしまった。

「起きない。」

ルフィは短く呟いて、寝心地の良い体勢を見つけてまた寝直そうとする。

「もう朝よ。」
「メシの時間になったら起きる。」
「まったく…。」

そういうとこだけしっかりしてるんだから。


ルフィの胸に顔を埋めて深呼吸をすると太陽の匂いでいっぱいになる。


「ねえ、ルフィ。」
「んん?」
「ルフィは海賊王になったらどうするの?」


私の突然の質問に、しばらくの間を置いてからルフィが顔を覗き込んで来た。質問の意図がわからないと言うように目をぱちくりさせている。
ルフィの黒い瞳をしっかり捉えてもう一度問いかけた。

「ルフィは、海賊王になったらどうするの?」


この冒険は終わるの?


どうしても聞けない一言が喉の奥に引っかかって、苦しい。


「どうって…何も変わんねェぞ。」
「………。」


私は何も言えなくて、じっと見つめる。


「何も変わんねェよ。」


寝ぼけていた子供の顔から芯の強い男の顔に変わる。

いつも鈍感なくせに、私の不安はどうしたって見抜かれてしまうんだ。


「世界地図を描くには、世界何周すればいいんだろうな?」


未来を語るルフィの顔はいつも少しだけ大人びている。
その笑顔が眩し過ぎて、見つめていると息が止まりそうで、俯いた。


ルフィは私の前髪にキスをして、さっきよりも優しく抱きしめる。



私達の間に確かな約束はないけれど。

ルフィの思い描く未来の中に私がいられることが、宝物よりも何よりも価値がある。


きっとそれは、どんな宝石も、地位も名誉も栄光も敵わない。



目を閉じて夢の続きを見る。

真っ白に光り輝く中で未来を思い描く。



ルフィと、そのとなりにいる私を。


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ルナミ愛が世界繁栄することを祈ってます。
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