もし一繋ぎの大秘宝を手に入れて、海賊王になることが出来たら。
ルフィはその後どうするのだろう。
彼は前しか見ていないからいいかも知れないけれど。
昇った陽が必ず沈んでいく様に。それに伴って一日が終わっていくように、自然に、必然に、絶対に。
始まった旅は必ず終わるし、恋だっていつかは思い出になる。現在は過去になってしまう。
大好きなオレンジ色の太陽が沈んで行くのを見ながら、最近のナミはそんな途方もないことばかり考えていた。
ふと、ルフィが海賊王になる、ということを前提に考えでいる自分に苦笑を零す。
あちこち傷が増えていて、少しは逞しくなった様だが、二年越しに見たルフィの笑顔は相変わらずだった。こんな自分たちの船長なら、きっと海賊王にだってなることが出来ると。
自分も含めたクルー全員がそれを信じている。
でも、だからこそ、旅の終わりを思わずにはいられなかった。
気づけばもうこの海の折り返し地点。
「ナミ」
「あ、ルフィ」
突然背後から掛けられた声に振り返れば、そこには自分より幼く映る船長の姿があった。なんとも見事なタイミングだ。
「何やってんだ?」
「何って―」
―ルフィこそ珍しいじゃない。こんな時間に。
そう言うと、麦藁帽子の青年は少し笑って、黙ったまますとんと隣に腰を降ろした。
「ししっ、ナミは夜明けが好きだからな」
いつかそんなことを言ったのをぼんやりと思い出す。この一味の一員として航海を始めたばかりの頃だった。夕日のオレンジのように鮮明ではないけれど、仄かに橙に色づき始めた空が優しくて、それが好きなのだと素直に伝えた。
律儀に覚えていてくれたのだとふわりと気持ちが明るくなる。
「…昇っても、沈んじゃうんだけどね」
「?」
腕を精一杯広げて伸びをしていたルフィは、その言葉に不思議そうに首を傾げた。
「何言ってんだ?」
「ふふ、当たり前の事だけど」
「そうじゃなくてー
まだ昇ってもないのに、沈む事まで考えてもしょうがないだろ」
「!」
何気ないその台詞は余りにも確信を突いていて、全部見透かされているんじゃないかと言う錯覚に陥る。旅の終わりなど見えないのだと言われている気がした。
当の本人は「腹減ったー!」と自船のコックを起こしに行こうとしているから、多分そんなことはないのだろうけど。
「ルフィ
…ありがと」
この航海は終わらないのだと、思わせてくれる貴方へ。
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(いつも旅の始まりの前に)
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ルナミ大好きです!
参加させて頂いてありがとうございました^^
ルナミ祭の更なる繁栄を願いつつ
御鳥