大雨が降っていた。勢い良く落下してくる水滴がアスファルトにぶつかり弾け飛ぶ。わたしの眼には今、とても広い空が映っていた。


「ルフィ?」
「ナミ、ナミ」


天井も屋根もない。灰色の空から落ちてくる雨水が、まるでわたしたち二人を狙っているかのように錯覚する。
(ルフィの眼には何が映っているの?)


「どうしたの?」
「どうもしねえ」
「何か辛いことがあったの?」
「そんなもん、ねえよ」


冷え切った肌と肌。水滴がルフィの髪を滑り、わたしの頬に落ちてくる。アスファルトに押し付けられた背中は痛いけれど、ルフィはもっと痛そうだとぼんやり思った。


「ねえ、ルフィ。ひとつだけ、いいこと教えてあげる」
「は?」
「止まない雨なんて、ないのよ」


一人きりの夜なんて幾度も越えた。いくらそれに慣れていくふりをしても、本当は傷が深まるばかりだった。わたしはどんな顔で笑ったんだろう。愛しい人の頭を抱え込むと、お互い、少しだけ身体が震えたの。


(止まない雨)


ナミの濡れた髪を撫でる。絡みつくオレンジ色の毛先に、ちゅとキスを落とす。
(どうしてだろう。すごく、すっごく、胸が苦しい。)


「・・・ルフィ?」
「つらい」


おれがぽつりと呟くと、ナミは目を丸くした。


「ナミのそばにいると、すごく大切だなって、すごく好きだなって実感して、なんか、つらい」


ナミは何も言わなかった。けれど、押し殺したような笑い声だけが耳に届いた。ぬるま湯に浸かっているかのように生温い時間が過ぎる。


「ほんとばかね、あんたって」


(ああ、今気付いた。ナミの体温は、おれには勿体ないほど暖かいんだ。)


「それは幸せって言うのよ」


ぽたり、

おれの毛先から流れた水滴が、ナミの頬を滑り落ちた。汗も体温も感情も全て絡み合って混ざり合って、もう掬い切れなくなればいい。投げ出されていたナミの右手を、自分の左手で覆った。その後、確かめるように手の平と手の平を擦り合わせた。雨でしっとり濡れている。それに境界線さえ溶け出すような錯覚を覚える。


「ずっと、傍に、いろよ」


生命線が重なる。感情線が重なる。運命線が重なる。


「おれ、もう、他に何もいらない」
「・・・同感」


いつもおれに怒ってばかりいるナミが、にこり、と柔らかく笑った。つられるように、おれも笑った。繋いだ手の平から派生する熱。どくんと心臓が大きく一度脈打った。


心臓の奥に降り続ける、止まない雨の正体は、

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素敵な企画に参加させて頂き、ありがとうございました。ルナミ大好きです!!

uki
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