随分久しぶりに会ってみると彼女の髪はえらく伸びていた。肩に届くか届かないか、くらいに短かった髪が、細い腰のあたりまで。

「どうしたのよ、急に。」

ルフィはナミの髪を手に取ると、中指と人差し指でハサミの形をとって前はこのくらいだったかなと長さを計る。

「伸びたな。一度も切らなかったのか?」
「整えるくらいはしたわよ。」
「ふーん…」

後ろから抱きしめるとちょうど鼻がうなじにぶつかったあの頃が懐かしい。

「ちょっと…あんまり触らないで…」
「ああ?」
「くすぐったいじゃない…」

ルフィはナミのたゆたうオレンジ色のカーテンを掻き分けて懐かしいうなじに指を添えていた。鼻をうずめて匂いを嗅ぐのは少しブランクがあるがなんら不自然なく、誘われるようにだ。
そこからはルフィの知らない香水の、少し大人びた匂いがする。日に焼けないうなじは白く、他に比べて少しだけ柔らかい気がした。

「悪ぃ。」

優しく髪を戻してやる。ナミにはルフィの丸い指先が離れていくのがひどく詳しくわかった。

「ほんと、アンタって変わらないのね。」
「おれも毛ぇ伸ばしたほうが良かったか?」
「まさか。そういう事じゃないわよ…」

変わらないのは態度。そこまでしておいて、それ以上はない。ましてや、キスなど有り得ない事だ。
好きな男に髪を触られて、うなじを撫でられ、くすぐったいだけでいられる程ナミも子供ではない。触るな、と言ったらもっと強引に触られたって構わないのに、こんなにも優しく髪を肩に掛けられてしまっては催促しづらいのが乙女心。
ナミは少しだけ唇を尖らせて、だけど彼のそんなところが大好きなんだと思った。それが悔しくて、癪に障る。

「変わってなくて、良かったわ…」
「何だと?!おれ、スッゲー強くなったんだからな!!」
「だからそういうことじゃなくて…」

ルフィはムキになって腕を振り回してみせた。

「おいナミ!見てろ、今、何かしてやる!!」
「いいわよ!わざわざ船の上で暴れないの!!」

わかった、わかったから。そう言いながらナミはルフィの回転する腕、手首を優しく掴む。

「危ねぇ!いきなし触んなよ、お前吹っ飛ばされてぇのか?」
「いいえ。でもルフィは止まるって思ってたから。」

私を突き飛ばすなんてできないでしょう。ナミは出会ったばかりのころに見せたあの勝ち気な笑顔を彷彿させる表情でそう言った。

「しししっ!なんだ、バレてたのかよ。」

そして、彼は彼女以上に優しくその手をゆっくり離すと久しぶりだな、と笑ってみせる。
手を繋ぐ、ということが好きだ。ナミの白く柔らかい手を記憶にあるよりいくらか分厚く大きい手が好きという単純な気持ちを目一杯込めて握る。

「本当に久しぶりだなぁ…」

香水の匂いの奥からみかんと太陽と宝石の匂いが、ナミの匂いが、懐かしくて愛しい匂いが鼻をくすぐった。

「待ち遠しかったわ…」

ルフィはその匂いを堪能するために少しの間、黙ってしまったがナミのほうは沈黙に耐えられなかったようだ。
握られた手が察する、肉刺と傷が耐えない手指。爪先のほうにまである筋肉。じんわりと体温と共に感じる優しさと愛しさがナミの唇を自然とそう動かした。

「うん。おれもだ。」

そして、敏感になった聴覚がルフィの声をはっきり拾い上げる。

「ずっと片想いしてる気分だったのよ…?」
「悪ぃな。でも、おれもちょっとだけ片想いしてるみてぇだった。」

会いたかった。触れたかった。顔が見たかった。そう言われるだけで2年分のちょっとした寂しさなど消えて無くなるようだった。


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→お粗末様でした!
企画繁栄願っております
ありがとうございました


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