08

「店長さん!! 店員さん!! 」

妃乃那と胡索が店先にいると、聞き覚えのある声がした。

「「マツ君!!」」

マツは妃乃那と胡索の方へ駆け寄った。息がかなり乱れている。遅くなってしまってすいません。こないだとは違い、マツは何故かにこにこしている。

「マツ君、大丈夫だったの?」
「大丈夫です」

一週間くらい学校休んだらしいが、マツは相変わらずにこにこしている。果たしてそれは大丈夫な事なのか? 何で、そんな笑っているの尋ねた。一週間前とはえらい違いである。

「実はあの後、すぐにあやめちゃんからメールが」

マツは顔を赤らめた。胡索は微妙な顔をしている。マツの事だけが大好き。だから、帰ってきたら、お嫁さんにしてね、という事をあやめに言われたらしい。まさに惚気話である。

「でも、良かったね」
「はい、本当にありがとうございました。」

マツは深々と頭を下げた。

「それで、これはお礼のお金です。」

マツはお金の入った封筒を渡そうとした。しかし、妃乃那はお金は貰わない。と言って、その封筒を受け取らなかった。その妃乃那の突然の行動にマツは驚く。
お金はちゃんとお支払いするので受け取って下さい。
マツには感謝の気持ちがあったので、それだけは譲れなかったのだ。

「じゃあさ、そんなに渡したいんだったら、あやめちゃんと来て?」

マツは目を真ん丸くして驚いている。あやめちゃんがロンドンから帰ってきたら、二人で一緒に来て。待っているから。妃乃那はそう言いながら、マツの頭を撫でた。

「分かりました」

それまで、閉店なんかしないで下さい。とマツは笑いながら走っていく。妃乃那と胡索はマツが見えなくなるまで手を振っていた。





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