もしも神様というものが存在するのなら、どうしてこんなに酷い仕打ちをするのだろうか。一体僕が何をしたというのか?何故僕がこんな目にあわなきゃならないのか?そんなことを幾度思い、過ごしてきただろう。だけど、いるかどうかもわからない神を恨む事にも、憎む事にもいい加減疲れた筈なのに、この思いは一向に消えてはくれない。

「姉さん。何処かに出かけるの?」
「うん。帰りは遅くなるから、恭弥…悪いけど母さんに夕食は要らないって伝えといてくれる?」
「…わかった」

姉さんが『帰りが遅くなる』、そう言う日は決まって彼氏に会う時。普段よりも少し大人びた服装は、年上の彼氏に合わせる様見つくろっているものなのだろう。普段は使わない甘いフレグランスの香りも、彼氏の前で『女』を演出するためのもの。全ては一人の男の為、僕じゃない、男の為のモノ。それは胸を刺す程の痛みを伴う。
物心が付き始めた頃、自分の気持ちに気が付き、姉さんを『好き』だと思う気持ちに吐き気がした事をおぼえている。血の繋がった姉の事を『女』として思う自分に。『僕の頭はどこかおかしいんじゃないのだろうか?』そんな事を幾度も考えた。一人でいる事を好み、誰とも群れることをしなかった。それでも、姉さんだけは違った。僕が欲しいと思うただ一人の人。
どうして僕らは血を分け合ってしまったのだろう。どうして菜摘は僕の『姉』で、どうして僕は彼女の『弟』なのだろう。だけど、僕らに血の繋がりがなければ、きっと出会う事も無かった。菜摘を想う事を許してはくれない、憎くて仕方ない筈の血。だけど、菜摘と切れる事のない繋がりをもたらせてくれた、大切で仕方ない血。

矛盾だらけの僕の思いは、これから何処へと向かうのだろうか。この思いが報われる日は、訪れてくれるのだろうか。願わくば僕は…



(そうすれば、きっと楽になる)



2009
雲雀×姉設定が好きなんです。
title/nichola