ハーブティーは飲める?と聞く女性に首肯すると、
程なくして柔らかな湯気をくゆらせたカップが運ばれてきた。
「はい、どうぞ」
熱いから気をつけて、と優しく微笑まれる。
不思議な味のdrink me
「で、学校に行こうとしていたみたいだけど、なにがあったの?」
「わからないんです」
カップに注がれた液体を睨みつけるように俯く。
「わからない?するとつまり気づいたら此処にいましたって感じなのかな?何かしたりとかも?」
「そう、ですね…普段通りに過ごして、いつも通りの道を通って駅に向かっていたはずなんですけど」
「携帯は持ってないの?」
「持ってます。ただ、ずっと圏外で…」
「じゃあ私のを使ってみようか」
はい、とピンクベージュの携帯を渡される。
自宅の番号に電話をかけてみる。1コール、2コール………、10コールを過ぎてようやく繋がったと思えば”おかけになった番号は現在使われておりません…”
「っ…!」
嘘だ。そう思いかけ直すも結果は変わらずじまいだった。真田や柳達にもかけてみるけれどやはり”存在しない番号”になっていた。
「なんで、繋がらないんだ!」
思わず携帯を投げ飛ばしそうになるも、借り物を投げ飛ばしてはいけない。と少し頭を冷やす。
目の前の女性にありがとうございました、と携帯を返せば苦笑しながら受け取られた。
「ふーむ、ますます謎だなあ…。学校は何ていうんだっけ」
「立海大附属です」
パソコンで調べてみるか、と部屋から持ってきたであろうノートパソコンで検索するも“検索結果 0件”という虚しい結果に終わった。
「これもダメ、か…」
一体俺の身に何が起きたんだろうか。
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