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気になるじゃない。前編(コラソン)
そう、彼らはすごく怖い。
ドフラミンゴのほうはわかりやすく脅しをかけてくる。たしかに遠まわしではあるけれど、実際に要求を口に出して、人の大事なものを盾にとって、不敵に笑って、その心を操るのだ。
私も、糸なんか使われなくたって、十分彼の思い通りに動かざるを得ない、そんな一人だ。

 
という、まあドンキホーテ・ドフラミンゴが怖いなんていう当たり前すぎてクソほどもつまらないお話は、カーム・ベルトにでも放り出して、海王類にでも食べさせてしまいましょう。


で。

「…」
「……なんでしょう」
「……………」
「………」

問題はこっち。
私が…こう、なんというか、最近実感して怖いのは、コラソンのほうだ。

「……」

彼はしゃべらないから、なんでもない、という意思表示を言葉ではしない。即ち沈黙が続くのみ。
何か言いたいことがあるのか、ドフラミンゴに連れてこられたばかりの私を訝しんでいるのか、それとも単に気に入らないのか(そんなに子どもに見えるのかな…)、本当になんでもないのか。
…いや。こうも最近、気が付いたら彼が私の後ろにいて、しばらく黙ってついてくるという事態が続いているのだから、何でもないはずがないのだ。

困る。怖すぎる。
強くて、大きくて、しかもあのドフラミンゴがめちゃくちゃ丁重に扱っている(ような気がする)男が、何も持たない私に、ひたすらついてくる。
 もし私がコラソンに対して、何かしら下手をうってドフラミンゴに処分されるなんてことになったら、と考えると、恐ろしくて仕方がないのだ。
だからお願い、ついてこないでコラソン…!あ、今転んだでしょ。

「…」
「…」
一度は前を向き直したが、大きな体が倒れたのちに、むくりと起き上がる気配を感じて、コラソンのほうを振り返った。

「あの…特に用事が、あるわけではないのですよね?」
「…」

…………こくり。
あ、うなずかれちゃった。
なんだ、用事があるわけじゃないんだ。
…いや、なくていいんだけどね、用事!

「…そうですか、失礼します」
「…」

そう思って、再び、くるっと勢いよく前を振り向いて、進んでいた方向へ再び歩き出した。
とたん、ぐいっと、それはもうすごい力で肩を持っていかれて、驚くどころの騒ぎではない。
力、強っ!!!

「ぎゃあああーー!」
「っ!!」

大声のせいか、ぶるっと震えたコラソンが、何かを落とす。紙…え、筆談の紙?
肩を掴まれたままなので、屈んで落ちた紙を見ようと、少し身をよじった時、

「よけろー、マリーーーーー!!」
「きゃー、あぶない!」
「は…?」

デリンジャーたちの声が聞こえた。それと同時に、頭にすごい衝撃が走る。
なに、これ…大きな…石…?いや、…普通に痛いんだけど…あなたたち、どんな、遊びを…。


コラソンの馬鹿みたいに大きい手が、自分の肩から外れた。離されたんじゃない、私が床に倒れ込んだんだ。

「…いたい…」
「…」

我ながら頭の悪い呟きを残して、意識が薄れていくのを感じていたら、くるりと視界が回り、天井が見えた。

「……?」

…コラソンだ。
やめてよ、そんなに乱暴に抱き起されたら、頭揺れて気持ち悪いよ…。
コラソンの手が、私の頭に触れた。
不覚にも、大きな掌に包み込まれたのが心地よくて、一瞬痛みを忘れそうになるけれど、彼の手が不自然に私の髪の毛の間を滑ったので、おそらく血が出ているのだろう。

視界の隅に、紙きれが見えた。
あ。そういえば。やっぱり、用事あったんじゃない。


ねえ、私は、貴方のドジにも、ドフラミンゴの怒りにも巻き込まれたくないんだよ。
だから、なるべくコラソンと関わるのは避けたいって思っているのに。


なによ。
(それ、気になるじゃない…)