ゴシップのピークスパイダー(巻島)
「…何ニヤニヤしてんだよ巻島ッ!」
「イテッ!?ちょ、むやみに叩くなショ…田所っちは力強いんだからさァ」
ニヤニヤしてねぇし、とそっぽを向く巻島の肩に手をまわして、話を始める。
誰と目があって手振ってたのか、今日こそ聞いてやろうじゃねえか。
「彼女出来たって?巻島」
「はぁ!?おま…」
今度は俺がにやにやしながら、巻島の反応をうかがう番だ。
ふーん、本当にいたわけか…。
「で?誰だよ、ったく教えてくんねーもんなァお前ってやつはよォ」
「絡みウザいッショ、田所っち…そっちこそ誰から聞いたんだよ…」
す、っと右腕が伸びて、巻島が女子の集団を指さす。
「椎名」
「え…え!?」
椎名!?と叫びそうになり、巻島があわてて俺の口を塞ぐが、その間も椎名から目が離せない。
意外だ。
巻島と、椎名。
…意外だ。
何故かと言えば。
「……(無い…)」
「田所っち?」
「…(ねェぞ…)」
「オイ…」
「…何だよ」
「気持ちはわからないでもねェけど…どこ見てんショ…」
呆れた顔でそう言った巻島。いや、だってよぉ。
可愛いし、気さくな女子だったと思う。でも。
…無い。
巻島の大好きなグラビアアイドルたちの命が、無い。
「無いな…」
「田所っちィ…逆に俺がグラドルみてェなの連れて歩いてるの想像できんの?」
「…それはそれで無いな。悪ィ」
「失礼ショ、なんで謝るんだよ!」