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君という花(御堂筋)
『富山だったと思うの』
「…は?」

彼が、私の話なんて、なかなか聞いてくれるもんやないって知ってからは、こういった唐突な話しはじめをしようと、意識するようになった。


『テレビに、映ってたわ』
「…」

ね、こっちは向かないけれど、ちゃんと聞いてくれている。
わかるよ、今の彼は、そういう背中やって。


『向日葵の花が、いっぱい咲いててね。夏の花って、なんであんなに輝いて見えるのかしら』

「…向日葵」

『うん。向日葵畑が、写ってた。私、向日葵が特別に好きなわけじゃないんだけれど』


まばたきの度に、あの、黄色く染まったテレビの画面が浮かんでくるのだ。
焼けつくような色が、画面越しなのにこんなにも私の心を支配する。


『やっぱり、綺麗だったの。もし、本当に目の前にあんな光景が広がっていたら。なまで見たら―どうなっちゃうのかな、って』


燃えてなくなるかもね、と言って翔くんの背中に突撃してみる。
振り向かなくていいわけじゃないんよ?


「痛いわ、やめぇ。ついでにそのキモい言葉づかいも」

鳥肌立つわ、と頭を小突かれた。
あ、こっち向いた。


『えへへ、だめやで翔くん、向日葵は太陽のほう向くもんや言うやろ』
「まだ何を言うてるんこの子は、あーはいはいわかったわかった」

べりっと引きはがされて、正面でぎゅーっとされる。
幸せ者だなあ、私。


「富山」
『ん?』

「ええよ、連れてったるわ」
『…自転車で?あはは、無理やわそれは。ママチャリ重いし。ロードには乗れんやろ』
「それでも、連れてったるから」

ぽす、と頭を抱えられて、息が苦しくなる。
目の前いっぱい、翔くんのシャツ。

こういう時は…。
知ってるよ、私。彼が照れてるときは、顔が見えないようにいつもこうやって”目隠し”する。


「…あー…」
『…なに?』
「…」


聞き返したけれど、それっきり話すのをやめてしまった。
何て言おうとしたのか、なんとなくわかるけれど。


『ふふふ…連れてって、くださいね?』
「…キモ」