ささやかな仕返し
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『…………あ、』
「……おはよ」
『お、はよ』
「好きなの?」
『へっ!? な、なにが!?』
「このパン」
『……え、』
「欲しそうにずっと見てたから」
『………あ、あの、えーと』
「あげる」
『えっ』
「俺、シールが欲しくてこのパン買っただけだから」
『で、も……これ』
「食べかけでいいなら、だけど」
『……ぁ…浅羽くんの…食べかけ…』
「………やっぱり嫌だった?」
『そんなわけない!いただきます!!』
「…………」
『……へへ、おいしい。ありがとう、浅羽くん』
「……うん」
『ん?どうかした?』
「……いや、何でも」
……全く。教科書を忘れたって言うから、わざわざ届けにきてあげたのに。祐希、全然俺に気付かないんだから。
パンじゃなくて祐希を見ている彼女と、彼女に食べてほしくてパンを買ってる祐希。
二人が想い合っていることに気付くのは、一体いつになるのかな。
「………祐希ー」
「……あれ、悠太。いたの?」
「いました。というかさっきから祐希のこと呼んでたんだけど」
「……そうなんだ、全然気付かなかった。悠太、声小さいんじゃないの」
「そういう問題じゃないでしょ。はい、教科書」
「あ、ありがと」
「あー、それと祐希」
「何?」
「今日の放課後、委員会で体育倉庫の裏掃除するって言ってたよ、彼女」
「………えっ」
「手伝ってあげなよ、どうせ暇でしょ」
「……悠太、それどういう」
「じゃあ、授業始まるから」
普段迷惑かけられてるんだから、このくらいの仕打ちはいいでしょ。祐希をからかえる機会なんてそうそうないからね。他のみんなに言っていないだけ、感謝してほしいくらいだ。
ささやかな仕返し
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この双子だいすきです。
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